2012年4月21日土曜日

アメリカからの3つの刺激

やばい、早く研究しなきゃ。
てか、みんなで研究しなきゃ。
そもそも、もっとみんな参加しなきゃ。




アメリカのフロリダ州Sawgrass Marriottで2012年4月16日~20日まで開催されたAmerican Meteorological Society主催の研究会、The 30th Conference on Hurricanes and Tropical Meteorologyに参加して思ったこと。2年に1回行われていて非常に歴史の深い研究会であり、やはり最新の研究をするすばらしい研究者がこぞって惜しげもなく発表しまくっていた。もちろん僕も発表した。発表の内容は幸い、3月末にthe Journal of the Atmospheric Sciencesに受理されており、自信を持って発表を行うことができた。それについてはここでは触れないことにして、他の研究者の発表を5日間聞き続けて感じたことをここに残しておく。



やばい、早く研究しなきゃ。

そう思ったのは学会が始まって2日目くらいのことだった。僕が興味を持っているMadden-Julian振動という熱帯インド洋から太平洋にかけて積雲群が東進する現象のメカニズムは、やはり未だにわかっていない。昨年の秋から冬にかけてCINDY/DYNAMOプロジェクトとして熱帯集中観測が行われていたこともあり、MJOについて多くの研究者が新たな知見を見いだしていた。「なぜゆっくり東進するのか」だけではなく、「なぜMJOが出現するのか」や「MJOと対流結合Kelvin波は本質的に同じだ」など、様々な観点からMJOのメカニズムをこぞって調べ合っていた。自分も現在、それに関連した研究を行っているつもりであるが、今僕が考えていることに近いかもしれない研究発表がいくつかあり、ちんたら研究していると「手遅れ」になってしまいかねないと思って焦った。元九大教授が言ってたことを思い出した。

「私は博士号をとるまでに何度も先を越されてきた。博士号取得になった研究はギリギリ勝ててよかった。」

やばい、早く研究しなきゃ。そして、早く論文にまとめて出版しなきゃ。



てか、みんなで研究しなきゃ。

みんなで研究するスタイルは、少なくともうちの分野の大学生ではあまり見かけない。自分のやりたいテーマをじっくり研究し、発表し、ひとつひとつこなしていく。もちろんそのスタイルは意味のあるものだし、好きだ。それを継続してかまわないと思う。ただ、アメリカの研究を見ていると怖くなる。「彼らは2年後、どこまで研究を進めてくるのだろうか。」

ざっくりといって、彼らのスタイルはこうだ。ある先生のもとで似通ったテーマを研究することで、その分野の学問は一気に進展する。おそらく、その先生が得意とする現象の研究をしたくてアメリカ全土、もしくは日本を含む海外から学生が集まってくるんだと思う。だから大規模に一気に研究を進めることができる。日本ではそういう印象はあまりないと思う。むしろ、同じ大学内ですら同僚が何研究しているかたしいて把握していないのが実情だ。このままだと有益な情報を得るチャンスを失い、失速してしまう。自分だけではできないことは山ほどあると思う。では、日本スタイルの「良さ」を残しつつアメリカスタイルの「良さ」を取り入れようとすれば、どうすればいいだろう?

日本中にいる学生を含む研究者と情報交換を綿密にし、仲間のつながりを深めていくのがいいのかもしれない。共同研究である必要はない。ただ、みんなでつながって研究しなきゃ。



そもそも、みんなもっと参加しなきゃ。

日本じゃ感じることのできない、質の違った高揚感が今でも残っている。むしろ文章を書きながら、再び高揚してきている。学会会場に足を踏み入れてみたらわかる。そこにいるのは、いつも僕が論文越しに「会っている」偉大な研究者たちだ。ちゃんと直接話せたとは言えないが、ポスター発表を聞いたり、Coffee breakで遠目で眺めたり(笑)。有名な方々の表情と声、身なりを覚えた。これから論文を読むときは「あ、あの人が書いたんだ。」と想像しながら読めると思うと、なんだかわくわくする。

研究発表はもちろん、すべての言葉を聞き漏らすまいと必死になれない英語に耳を傾ける。初日はしんどかったが、2日くらい経つと慣れてきた。興味がある内容の発表なら聞けるように変わった。一人でアメリカへ向かい不安は多かったが、それほど実際に苦労したことはない。英語が不安、生活が不安、日本が好きすぎるなどいろいろなことを考えている人がいるかもしれないが、とりあえず行ってみることから始めませんか?みんな、もっと参加しなきゃ。もったいない!



早く研究しなきゃ。みんなで研究しなきゃ。みんなもっと参加しなきゃ。




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研究発表において反省している点は多くある。
話すのが早くなった。聴衆とつながれなかった。質疑をうまく利用できなかった。
でも、この反省は次に生きるし、また行きたいと思えている。
早いうちに経験することで足は軽くなる。
だから僕はさっさといろんなことをしてみる。というより、してみたくなるんですよ。