2011年12月29日木曜日

On the Physical Interpretation of the Traditional Approximation

Nontraditional Coriolis項について多くの人に理解していただくために,問題となっている「Traditional Approximation」を気象力学ではなぜ必要とされているかに関する物理的説明に挑戦する.


端的に言うと,「Traditional Approximation」は角運動量の保存のためにしなくてはならなかった近似である.



そもそも,大気の運動はナヴィエ・ストークス方程式(NS式)で記述される.このことはどの気象力学の入門書にも書いてあるだろう(e.g., Holton 2004).この方程式はベクトル形式で導かれる:
Ω:地球の回転ベクトル,U:風速ベクトル,p:圧力,
ρ:密度,g:重力加速度,Fr:摩擦力など.
この式は,地球の回転による効果(コリオリ力)と圧力勾配による力(圧力傾度力),重力,その他の外力が大気に加速度を与える(左辺)ということを意味している.この時点ではまだ,近似を行なっていない.

NS式を計算のために,東西・南北・鉛直方向に成分分解する必要がある.その際に,鉛直方向を「楕円である等ジオポテンシャル面」に垂直な方向とすれば,重力加速度が水平成分を持たないので扱いが楽である.ところが,安直にそうしてしまうと地球を楕円として計算しなくてはならず,厄介である.そこで施すのが「球面ジオポテンシャル近似」であり,その「楕円である等ジオポテンシャル面」を球面として扱えるようにするものだ.詳細はWhiet et al. (2005)を読んでいただきたいのだが,この近似は我々が扱う領域では非常に良い精度で成り立つ.それで導かれるのが以下のような成分方程式系である:
u,v,w:風速,φ:緯度,r:地球中心からの距離.
いま,rは地球の中心からの距離という独立変数である.左辺にあるrを分母に含む項はメトリック項といい,地球の曲率に関連した項である.また,左辺のsinφを含む項は地球の回転ベクトルの鉛直成分に基づくコリオリ項であり,cosφを含む項は水平成分に基づくコリオリ項,すなわちNontraditional Coriolis項(NCTs)である.この方程式系はNCTsを含む非静力学方程式系(NonHydristatic Deep equations;NHD)そのものである.この方程式系は角運動量やエネルギー,渦位の保存則を満たす.

NHDは非常に良い方程式系だが,地球の大気というのは実質的には100km程度であり,地球の中心からの平均距離6371kmと比べて非常に小さいという理由から,より簡単に扱えそうである.メトリック項に含まれるrという変数を地球の平均半径aという定数で置き換えてしまい,一方で鉛直方向の勾配のrはzに置き換えると,NHDは次のように簡単化される:
r → a,r微分 → z微分.
この方程式系に施された「地球の平均半径aで置き換える近似」は,言い換えると,「鉛直方向の変位を固定した」ということである.実は,この近似によって,方程式系の角運動量保存則が満たされなくなっているということにお気づきだろうか?

東西方向の運動方程式に注目してほしい.鉛直方向の伸び縮みがないという仮定をしているのにもかかわらず,鉛直方向の速度に関連する項が存在している―そう,NCTsとメトリック項だ.本来ならば上昇流があると空気が「上へ」移動する.その時に,変数である「r」が伸び,「地球の回転軸からの距離」が大きくなる.そのような関係がNHDでは成り立っており,角運動量保存則が成立していた.ところが,変数「r」を定数「a」で置き換えると,その角運動量を保存する関係は破綻してしまう.したがって,鉛直速度wを含む項を除外しなくてはならない.このことは,White et al. (2005),もしくはWhite and Bromley (1995)で丁寧に式変形で解説されている.物理的には上記のイメージであろう.

同様の考えより,南北方向の運動方程式からも左辺のwを含むメトリック項を除外する.また,鉛直方向の運動方程式からは,水平風u,vを含む左辺のメトリック項と右辺のNCTsを除外する必要がある.これは,水平方向に速度がある場合に鉛直方向の変位があり,鉛直運動方程式においてはそれらを除外しなくては角運動量保存則が破綻するからである.

以上のような幾つかの項の除外,すなわち「Traditional Approximation」を施すと,角運動量を保存する方程式系が導かれる:
この方程式系はNonHydrostatic Shallow方程式系(NHS)と呼ばれており,NCTsを含まない非静力学方程式系である.これは保存則を満たす4つの方程式系の1つとして,White et al. (2005)によって紹介されているが,あまり一般的ではないかもしれない.しかし,非静力学モデルでNCTsを加えない設定にしているひとはこの方程式系を用いている(はず)だから,もっと一般に知られるべき方程式系である.

NHSのうち,鉛直運動方程式においては圧力傾度項と重力加速度項とのバランスが良い精度で成り立っているため,左辺の鉛直加速度項を除外したくなるだろう.それを除外しても角運動量の保存には支障がないため除外してやると,かの有名な静力学プリミティブ方程式系(Hydrostatic Primitive Equations;HPEs)が完成する:
この方程式系は多くの有名な教科書(e.g., Holton 2004)では,中緯度におけるスケール解析で小さな項を除外することで導かれている.しかしその除外は,正確に言えば,角運動量の保存を満たすために「なさなくてはならなかった」近似である.

HPEsは保存則を満たす上に,扱いが簡単(変数分離可能など)なので,これまで気象学を大いに発展させてきた.現在でも,世界中の全球予報モデルや再解析データを作るのに用いられている.一方で,熱帯でのNCTsの除外に関してはその不適当さが指摘されている(e.g., White and Bromley 1995; Hayashi and Itoh 2012).そこで,保存則を満たすもう一つの方程式系である準静力学方程式系(QuasiHydrostatic Equations;QHEs),
を用いてNCTsの影響を調査しようというのが,私の研究である.

【References】
Hayashi, Michiya and Hisanori Itoh, 2012: The Importance of the Nontraditional Coriolis Terms in Large-Scale Motions in the Tropics Forced by Prescribed Cumulus Heating. J. Atmos. Sci., 69, 2699-2716.
Holton, J. R., 2004: An Introduction to Dynamic Meteorology. 4th ed., Academic Press, 535 pp.
White, A. A. and R. A. Bromley, 1995: Dynamically consistent, quasi-hydrostatic equations for global models with a complete representation of the Coriolis force. Quart. J. Roy. Meteor. Soc., 121, 399–418.
White, A. A., B. J. Hoskins, I. Roulstone, and A. Staniforth, 2005: Consistent approximate models of the global atmosphere: Shallow, deep, hydrostatic, quasi-hydrostatic and non-hydrostatic. Quart. J. Roy. Meteor. Soc., 131, 2081–2107.

がむしゃら

2011年というのは私にとって「がむしゃらな一年間」だった.
気象学会,国際学会,論文投稿に初チャレンジし,それと同時に多くの人と出会ってきた.財産となる一年間だった.



ちょうど一年ほど前,気象の研究として学部4年中間発表を終えていた.そして,卒業研究の発表,卒論….気象を必死に学ぶ学生が,気象研究者という世界に一歩足を踏み入れた瞬間だった.それから一年が過ぎた.


そもそも何で気象の道に進もうと考えたのか.ふと,そんな疑問が頭をよぎる.確か気象研究者になりたいと思ったのは高校2年の初め頃.当時は高校で受験勉強を主にしながら,部活をプレクトラムアンサンブル部(マンドリンクラブ)で満喫していた.

そんな中,もう一つ興味があったことが「地球温暖化」しているという事実だった.とりわけ勉強していたわけではなかったが,ひとつの疑問は頭から消えなかった:

「何で気象学者がたくさん頑張っても,温暖化していることすら社会に認められず,また温暖化のメカニズムも解明されないんだろう.」

何で解明されないのかという疑問…当時だからこそ口にできたんだと思う.その原因は人為的か自然的かというのは多くの本で言い合われていた.私自身はなんとなく温暖化は人為起源だと信じていたが,その説明はできたわけでもない.今でもメールの流出事件によって「気象学者が作り出している事実」のように噂されることもある.(その件に関しては反論がある.生データを一般の人が見て理解できるわけがないので,それをわかりやすく説明するために図表を作っている.細かい議論をしても本質は変わらない.それをデータの改竄と呼ぶものは勉強不足だ.)とにかく,気象への道に私を誘ったのはそんな疑問であった.結果的に九州大学を選び,受験した.そして目標であった研究室である「対流研科学研究室」に無事配属された.


気象の勉強は学部初期から授業があった.伊藤先生の大気海洋科学を始めとして多くの授業を履修してきた.それと同時に物理や数学の基礎も学んだ.3年の前半は興味が数学に移り,線形代数などをよく勉強した気がする.3年生の後期に配属が仮決定されるので,それまでの成績は非常に重要だった.幸い,点数は足りた.それが決まると,気象を学びたい気持ちがより一層強くなった.そこで川野先生に紹介してもらった「気象力学通論」(小倉義光 著)を必死に読んだ.夏から冬にかけてはそればかり読んでいた.3月に入る頃に読み終わった.力学的に大変難しかったので,再び数学に惹かれてきて,ベクトル解析を学び直した.ちょうどその頃,指導教官の退官が近いということで,大学院は他大学に行くことも考えていた.3月に東大の先生と会って,自分がやりたいことを話して,たしかにここの研究室が向いているかもしれないと言われた.しかしながら,最終的には九州大学を選んだ.うちの指導教官にあと2年間指導してもらえるなら,どうしても指導を受けたいと直感的に感じたからだ.ただ,その東大のK先生から聞いた言葉は一生忘れないだろう:

「絶対にStandardを下げるな.回りがどうであれ,常に自分ができる最大限で臨め.」


学部4年生になり,研究テーマを決めなくてはならなくなった.先生に持ちかけたのは「大気海洋結合を含む大規模スケールの現象を,力学的に扱える研究がしたい」ということだったはずだ.かなり大ざっぱな興味であった.先生に相談した結果,次のようにテーマが決まった:

「まずは大気から研究するということで,熱帯での力学を数値モデルを使って研究しないか.前から気になっているテーマがある.」

ということで,今のテーマである「Nontraditional Coriolis項(NCTs)の熱帯での重要性」に出会った.元々の興味とは逸れているのだが,興味深い内容だったのでこれを研究することに決めた.はじめは非常に苦労した.二次元で分散関係がどうNCTsの有無で変わるか,式を一生懸命変形したり,強制を与えて数値計算したりして調べたが,ほんの少ししか影響がない.重要じゃないではないか…という結論で終わりそうになった.

3次元実験をして,ようやく重要だという結論にたどり着けそうになってきた.なんとか卒研発表を乗り越えた.
当時のポスターは文字が多くてわかりにくい...

それを,他の実験も全て含めて卒論にまとめて,3月5日に気象学会九州支部会で発表した.当時の発表が聴衆に伝わったかどうかは今となっては疑問でしか無い.同様の内容は,2011年春の気象学会でもポスター発表している.その時は現業の方や他大学の人,防衛大のNCTsに注目している先生など,多くの人に脚を運んでもらえた.ほんとうに嬉しかった.ただ,彼らと名刺交換などをしておらず,誰が聞きに来てくださったのか分からなくなってしまったのは,悔いが残る.名刺を作っておけば良かった.

その発表後にさらに考察を重ねて,直感的にNCTsの影響が何故大きくなるかまでわかった.さらに,先生と協力して式による証明にも成功した.ここまでまとめることができたのは指導教官とともに研究してきたからである.そして,それを投稿論文にする作業が始まった.日本語で書き始め,何度も議論を重ねて英語に翻訳した.ちょうどその頃,韓国で日中韓気象連合大会があると聞きつけたので,思い切って参加することに決めた.国際学会デビューである.夏には夏の学校が名古屋であり,そこで多くの人と出会った.昨年も参加したが,さらにその輪が広がった.このような人とのつながりは,一生大事にしていく.口頭発表をしたことで,NCTsを少し有名にすることができた.また,伝わるプレゼンについて考え始めたのもこの頃である.
初めに「まとめ」たのは良かった.


論文の翻訳が終わりそうな頃,韓国に行く日がやってきた.練習に練習を重ねた.ネイティブの先生に見てもらい,非常に有用なアドバイスを貰った.発表当日,練習した分だけ堂々と発表できたと自負している.ただ,もっと海外の学生と交流すればよかったと後悔は残る.それが終わってすぐ英語への翻訳を終わらせ,12月に投稿まで持っていった.今はレビューを待っている状態だ.




気象学会デビュー,国際学会デビュー,論文投稿…新しいことづくしの一年間だった.がむしゃらに,なんでも周囲に合わせないように意識的に取り組んできた結果だろう.業績より嬉しいのは,その場その場で多くの人に出会ったことだ.彼らとFacebookでいつでも議論できるというのが,また面白い.当然,Facebookにいない人たちとは学会会場でまた会って議論したくてたまらない.がむしゃらに無理をしてでも頑張った結果,今の現状に至る.2011年は「がむしゃらな一年間」だったと,言い切れる.


2012年は,先生の退官に伴って,博士課程の行き先を考えなくてはならない.自分の中での様々な決心がつかないでいるので,しばらくはそのことで悩まなければならないだろう.来年の一年間は,

博士課程に進学するであろう「2013年度の自分自身のために,全力を尽くす.」

長いプレゼン,式のプレゼンの苦悩

第13回地球流体力学研究集会(12月14日~15日)で発表した.

「熱帯での積雲対流に関連した大規模運動におけるNontraditional Coriolis項の重要性について」
写真
*再現動画.再現では持ち時間を超過してしまった...
*Google+の動画の埋め込み方がわからない...リンクへ.


発表時間は質疑あわせて25分,
聴衆はおそらく「力学屋」.

これまでの発表とは,以下の2点で状況が異なる:

  1. 長い発表だと,メッセージを伝えるだけでは物足りないかも.
  2. 力学屋は式に反応するだろうから,式を多めにしたほうがいいかも.


まず1つ目に関してだが,これまでの多くの発表は発表時間10分前後と大変短かった.したがって,注意してきた点はただひとつ:

「Advertise」としてメッセージを強調し,相手の興味を惹くこと.

相手の興味を惹けば,質疑,さらには発表後の休憩時間,懇親会などで議論は弾む.だから,自分の研究を宣伝しさえすれば,プレゼントしては成功だ.しかし,それが20分程度になると話は違うかもしれない.一つのメッセージを突き通すのではなく,その結論にたどり着いた理由を幾分詳細に語らなくてはならない.だが,逆に考えれば20分「しかない」のだから,全てを語る「Full Story」とする訳にはいかない.ということで,

どこまで付け加えて話すか?

―それが今回最も悩んだ点である.

最近はプレゼンはアナログに作るようにしていて,「紙」と向かい合うところから始めた.ストーリーを作っていき,流れは完成した.そこでPCを開いてスライド作りに取り掛かった.当然,ひとスライド,ひとメッセージというルールは変わらない.そして発表二日前に数人の人に集まっていただき,発表練習を行った.…みんなの顔が次第に歪んでいく.特に,今回意識した「式」による説明の部分だったと思う.そして質疑に入ると,先生から一言:

「今の流れでは,僕ですらついていけないよ.」

いつの間にか,ものすごく難しい内容を20分という短時間に押し込んでいた.時間をかければわかるかもしれないが…といった内容である.何が悪かったか考えてみた.原因はきっと,

「力学屋」ならわかるだろう

という根拠のない,焦点となる聴衆の決め方だった.発表の流れで不要な部分を削り,やはり「メッセージを限りなく強調」する必要があった.どこが不要だと思うか練習の際に先輩に指摘を頂いたので,それを参考に式による説明を半分未満にした.その分,メッセージは強調できるように,余裕のある流れに変えた.

結局,伝えたいメッセージは発表時間が長くても短くても変わらない.だから,時間が増えたからといって,多くを付け足してはならない.ましてや,それが難しい内容であっては聴衆は嫌な思いをするだけだ.出来る限り「簡潔」にまとめ,聴衆に難しいと思わせない内容にまとめるよう,心がけなくてはならない.




ここで,2つ目の困難と直面することになる.通常,スライドには「ひとつの図表」のみに留め,それを利用して発表者がプレゼンする.しかし,それが

図表ではなく「式」である場合にはどうあるべきか.

この答えはまだ見つかっていない.非常に悩ましい問題だ.式が有名なものであれば皆納得してくれる.しかし,研究においては式はオリジナルであり,だれも知らないことが普通である.それをいかに簡単に伝えれるかは,一生の課題としてまとわりついてきそうなほどだ.一応,どの式からどの式が出てきて,その式から何を言いたいのかは,

矢印や一言を書き加えることで対処したつもりだ.

しかし,なにか物足りない.臨場感にかけると言うか,興奮しにくいと言うか….とにかく,これでは不十分なのだ.そこで,知人に紹介された一つの動画を見て,一つのことに気づいた.

彼女は,

数学的な式を,物理的意味を持ったバランス関係として,

あたかも簡単なことを言っているように話している.これが重要なことなのではないだろうか?私自身の発表ではそこに意識はおいておらず,むしろ導出さえすれば,結論を言えばいいというほどに勘違いしていた.今後は彼女のように話せるよう努力したい.その前に,自分が用いている式を正確に,物理的バランスとして解釈するところからはじめなければ.



今回の発表を通じて考えたことの結論:

  1. 長い発表でも,メッセージを伝える重要性に変わりはない.
  2. 力学屋が好きな式でも,数式を物理的バランス関係として説明する.


次の発表は学内になる.今から楽しみになってきた.

2011年11月6日日曜日

研究発表のSimplicity

プレゼンはシンプルに,伝えるべきことを伝えなくてはならない.内容を取捨選択し,必要な部分のみを残してプレゼンする.モノを売るなら多少オーバーでも良いかもしれないが…,


研究発表では
「シンプル」が許されるのだろうか?


これらの答えを追求すべく,先日あるゼミを研究室規模で行った.
「伝わるプレゼンについて考える」

始めに「一般的なプレゼン」において,伝えるためには何が必要かを議論した.その後,以前紹介したが,ガー・レイノルズさんの「シンプルプレゼンのテクニック」のムービーを1時間程度参加者で見た.その後,「学会発表におけるプレゼン」において,どこまでSimplicityが許されるか話し合い,何が最も必要なプレゼン要素であるかを議論した.その結果,シンプルな一つの答えに落ち着いた.


「タイトル・名前・メッセージ」
+最低限の付け足し


ただし,
タイトル=最も凝縮した研究のアブストラクト
名前=調査したひと
メッセージ=研究の結果から皆に覚えて欲しい一つのこと
である.




この結論に至るまでの過程を以下に記す.


17:05~「Why? プレゼンとは何のためにするか」
これに関してはさらっと流したが,おそらく参加者の考えていたことの大筋は一致していただろう.もちろん,

相手に「伝える」ため

である.具体的には(一般的なプレゼンの例ではないが),伝えることで相手に自分の研究を理解してもらえる.理解してもらえて初めて,コメント・議論へと移ることができる.それによって研究が進展する,もしくは広まっていくのだ.伝えるためにプレゼンを行うという共通の意識ができたところで,直ぐに次の議題へと移した.

17:15~「How? どうやって伝わるプレゼンにするか」
伝えたいなら,どうすれば良いのか.これに対する答えは様々であった.大きくまとめれば以下のとおりだ.
  • 相手が誰か考える.(知識レベル,賛成or反対派)
  • 喋り方を意識する.(声のトーン,早さ,元気の良さ)
  • わかりやすい内容にする.(見やすい図表,少ない内容)
  • 相手に頭を使わせる.(質問の投げかけ)
  • 相手に安心させる.(良いストーリー性)
最も意見が集中したのは「相手が誰か」という点であった.プレゼンは自分ではなく相手のために行われる.したがって,相手に合わせて発表する必要がある.自分の分野を相手はどこまで知っているのか,もしくは自分の意見に反対するか賛成するかなど,相手を知ることでプレゼンの方向が決まってくる.どうすれば良いのかが難しい問題であるが.

また,喋り方で相手が興味をもつかが決まるという意見も多く出た.まず,元気がないプレゼンは,前に立った時から損していることになるという.なぜなら,多くの人はプレゼンターのことは知らない場合が多く,第一印象が悪ければ(内容に少しくらい興味があったとしても)聞く気は自然と無くなるかもしれないからだ.はじめから聞く相手を失うのはもったいない.
特に気をつけるべきなのは,笑顔と「音程」(男性は低すぎず,女性は高すぎず)だ.また,オーディエンスの方を向いて堂々と挨拶したほうが良い.次に,喋り始めたら,その早さに気を付けなくてはならない.早過ぎる話し方はあってはならず,むしろ大事なところでゆっくり話すくらいの余裕が欲しいものである.一度,自分のプレゼンを録音してみるといい.頑張って緩急つけたつもりでも,意外と普通,むしろ早過ぎるくらいかもしれない.

相手に頭を使わせるのは,覚えてもらう意味で重要なポイントだ.「皆さんはどう思いますか」とさり気なく投げかける.実際に答えさせる必要はないが,「はて?」と考えたオーディエンスはその質問を覚えるだろうし,その後のプレゼンにもより集中してくれるかもしれない.試す価値はあるだろう.

良いストーリーを持たせることも忘れてはならない.次に何が飛び出すかわからない発表はオーディエンスを不安にさせる.良い意味でワクワクすればいいが,不安にさせては逆効果で,心を開いてくれなくなるかもしれない.そうならないために,「次はこう来る」ということをそれとなく相手が感じ取ってくれるプレゼンを心がけるのが無難だ.完全にワンパターンでは飽きられてしまうと感じるなら,ときどきアクセントを加えて,伝えたいことを印象に深く残していけばいいだろう.



意見は止まなかったが,本題はこれではないので速やかに次に移った.

17:40~「シンプルプレゼンのテクニック」
このムービーは何度でも見る価値がある.参加者が必死にメモを取るのは当然かも知れないが,私自身もスクリーンに惹きこまれた.何度も見ているうちに,プレゼンをムービーの内容から学ぶ以上に,ガー・レイノルズさんから学ぶようになる.本当に良いプレゼンをしている.

この間に,先ほどの議論とムービーの内容がリンクしていて面白いと思ったのは私だけではないはずだ.本気で議論すればこの内容に匹敵する意見は出てくる.それをプレゼンに実際に移せるかどうかが大事な事であり,このムービーで意識を焼き付けることができたなら幸いだ.


さて,本題に移ろう.

18:40~「Simplicity for us 研究発表はどこまでシンプルにできるか」

研究発表としてのプレゼンはどうあるべきか.シンプルにしすぎてはマズいのではないか.これについて考えるために今回のゼミを行った.議論は予定時刻を大きくずらすほど続き,意見も多岐に渡った.そのまとめとしては,先に述べた結論を説明するという形に留め,それ以外に気になったコメントを最後に付け加えておく.

まず,研究発表としてのプレゼンに最低限必要なのは,


「タイトル・名前・メッセージ」


の3つである.この結論は,「AからBへ」という具合に,プレゼンを終えたときにオーディエンスにどうなっていて欲しいかという考え方に基づいている.何よりも,相手に自分が何をしたのかを知ってもらわなくてはならない.何も知らずに難しい話を聞くのは苦痛だから,場合によってはプレゼンター-オーディエンス間に距離が生じ,最悪の場合,聞いてもらえないかもしれない.これではプレゼンの意味が全くなくなる.そうならないためには「タイトル」を十分利用する必要がある.タイトルを,「自身の研究内容を最も端的に表した一文」としてとらえると良い.すると,タイトルを見たときに何をやったのかが分かり,興味を持ってくれたオーディエンスとの距離は縮まるだろう.次に,誰が研究したかを知りたくなるはずだ.名前と所属を言えば十分だ.あとは,笑顔で元気に挨拶して話し始めればいい.そして,ここからはテクニックも関わってくるが,何を最も伝えたいかをひとつのメッセージとして始めに言ってしまうのだ.

「私は○○を研究したんだが,それによって□□という面白い結果が得られた.」

ガー・レイノルズによると,オーディエンスの集中力が高いのは初めと最後である.したがって,初めのうちにメッセージ,すなわち何を覚えて帰って欲しいかを伝えてしまうのが有用である.もしそこで「心から興味がない」と思った人は一切聞かないかもしれないが,このような相手は放っておけばいい.そうではなくて,「えぇー,面白そう」と思う人が増えたなら大チャンスだ.相手が「えぇー」となれば集中力が増す.最後まで頑張って聞いてくれる相手が増えたと思えばいい.

ここまででプレゼンの「綱」ができた.
(「綱」という例えだが,ある参加者が「AからBへ」という論理的最短ルートを「綱渡り」の「綱」に例えたのが面白かったのでここでは用いることにする.)
しかし,「綱」を渡るのは一般に,尋常じゃないほど困難を伴う.したがって,「吊り橋」程度に余裕を持たせれば渡ることができるオーディエンスが増えるのではないだろうか.「綱」に少しづつ「肉付け」していく.これによって,「何をしたか」から「何を伝えたいか」へと論理的に繋げる.ただし,この「肉付け」は多すぎてはダメで,必要最低限に留めるべきである.必要と思われるのは,

研究の動機・手法・必要な結果と考察

といったところであろう.研究の動機は,研究の結果がどれほどその分野にとって重要かをオーディエンスに理解してもらうのに必要である.また,手法は「最も理解して欲しい相手」のレベルに基準をおいて構成するのが良い.数値モデルやデータの細かい説明は必要ない場合が多い.しかし,相手が普段それらを使わない相手であったり,モデルやデータ自体がオリジナルである場合には詳細に説明しなくてはならないだろう.そして,結果はメッセージを信用してもらうために必要なだけでよい.それ以外を出す場合には,それを加えた理由にあった一言を,例えば「この結果は本筋から少しそれますが,コメントをお待ちしています」などと添えて出したほうが効率がいい.この方が相手も自分もわかりやすい.考察も論理的に必要なだけ説明する.そこまで済ませた後で,簡潔にまとめよう.まとめも,ダラダラ箇条書きで書くともったいない.図などで視覚的に記憶に残るスライドを一枚を用意するのが望ましい.どうしても箇条書きにしたいなら,視覚的に論理を追いやすいように「矢印」でつないでいくなどの工夫をしたほうがいい.文字の羅列ほど見苦しいスライドは,ない.

そして最後にもう一度伝えよう,
「メッセージ」を.

オーディエンスにひとつ,覚えて帰ってもらおう.



さて,これまでの議論のような削られた内容では全て伝わらないと不安になった人はいるだろうか.もしいたら,意識して欲しいことがひとつある.

「40分のプレゼンはFull storyでもよいが,それを10分で話せるわけがない.宣伝するという意識でプレゼンする方がいい.」
この内容は以前書いたが,まさに研究発表において当てはまる考えだ.全てを10分で話せなくたって,興味を持った人は終わったあとに質問するだろうし,コメントをくれるだろう.時間は足りないはずなので,セッション終了後に訪ねてくるだろう.そこで詳細な議論をかわせばいい.もしくは論文を読んでくれる場合もあるかもしれない.まずは,それほどの興味を持ってくれる相手を作ることだ.それが研究を伝えることの第一歩である.




--
スライドが黒い服に写って
プリントにしか見えない.

ゼミが終了するまで,こんなにもシンプルな要素まで落とし込めるとは思っていなかった.たった3点で良いのだ.あとは必要なだけ,相手に合わせて継ぎ足していく.そうして完成したプレゼンを用いて,元気と笑顔とともに「メッセージ」を伝えればいい.

この結論には意義を立てる人はいて当然だと思う.実際に,研究発表のシンプル化は語っても語り尽くせなかったからだ.しかし,私はしばらくこの結論に基づいてプレゼンする.

2011年10月25日火曜日

考えてきたプレゼンと評価,反省

国際学会での初発表.色々考えて臨んだ分,今の気持ちとしては「悔しい部分」が多い気がする.当然良かった点・悪かった点はそれぞれある.冷めないうちに,少し整理しておこう.


【良かった点】
1.最低限のコンテンツ

「Full storyではなく,10分程度のプレゼンはAdvertiseだ.」という気持ちで,内容はいつもと異なりひたすら削った.削るといっても学会発表なので,

「どこまで削っていいのか」

という難しい問題がつきまとう.シンプルにしすぎて問題設定が伝わらないのでは?そもそもの研究動機は理解してもらえるのか?信用してもらえるのか?いろんなことが頭をよぎる.しかし,全てを伝えるには12分は短すぎる.このことを信じてイントロは当初の半分,ディスカッションも半分程度に留めた.

「この選択はかなり怖かったが,必要不可欠だった.」

ということには修正して何度も練習して,本番を終えた今ならよく理解できる.他の人の発表を聞いていてわかった.それらを加えてしまっていては,オーディエンスに覚えて家に帰ってもらいたいポイントを覚えにくくしてしまう.その理由は3つある.まず,発表時間に余裕がなくなり,早口になり,全体が薄くなる.また,オーディエンスがひとつの発表を聞いて覚えて帰れることなど限られている.さらに,スライドを混雑させる原因となり,見難くなる.多くを知ってもらいたいがために失敗してしまうのだと思うが,「必要最低限」以上のものを含めることは避けるべきだろう.学会発表だと当然自分の結果を全部見て欲しくなる.頑張ったなら当然そうなる.でも,そこで取捨選択して公表する勇気を持たなくてはならない.
最近興味深い言葉を聞いた.

「論文は記録を残すために書く.学会発表は記憶に残すために行う.」

細かいことを言いたければ論文にして発表すればいい.学会は覚えて帰ってもらうためにある.学会はAdvertiseであるべきなのだ.覚えてもらえば,プレゼンの後で気になる人は聞きに来る.そこで議論すればひとりの「ファン」に詳細を理解してもらえ,こちらとしても有益な情報を得ることができる.今回の発表がそうであったように.


2.最低限のスライド

最も変えたのはここだ.「読むことはなるべく書かない.強調する場合は書く.」そう決めてスライドをかなり修正してきた.これまで(少なくとも春ごろ)のスライドは箇条書きを利用し,相手にとって「わかりやすい」ようにまとめていた.大事なところは聞き逃したくないだろうから,まとめて書いておこうという,オーディエンスのことを「考慮して」作っていた.この「わかりやすい」「考慮して」は間違いだった.逆にわかりにくいスライドを作り上げていたのだ.
その間違いは,箇条書きを駆使したプレゼンを多く見ることではっきりと理解できた.今日のいくらかのプレゼンを見たが,

「そんなに文字書いちゃ,どこ見ればいいかわからない」

というのが素直な感想だった.本か,掲示するため「だけ」に作られたポスターでも意識して作ったのだろうか.しかも,それを全部丁寧に読むのだ.時間を過ぎているのにもかかわらず.最近プレゼンを学び始めて発表を見る目が少し変になっているのもあるかもしれないが,箇条書きで三ページにわたる「Conclusions」を見かけたときには自分が正しいと確信できた.何を強調するかを決めているなら,それが目立つスライドでプレゼンを終えるべきだ.
そもそも,ひとつのスライドにはポイントひとつだけを持たせて作るのが良い.それを意識することで,自身のスライドは良くなったと思っている.

ポイントが思いつかないスライドは消す.
二つのポイントがあればふたつのスライドに分ける.

ふたつにスライドを分けるのは,結構躊躇した.でも,どうせ説明する内容ならば,スライドを増やすからといっても発表時間の負担にはならないだろう.さらに,必要ない文字は消す.読みたくないが必要な情報があれば,オーディエンスが読める分量まで書く.強調したいところは視覚的に印象に残りやすい図表を用いる.もしこれらの中で意識していない点があれば,すぐに意識したほうがいいと思う.オーディエンスを思いやるなら.


3.最大限のコネクション

会場とつながることは大切だ.つながって初めて,研究をより理解してもらえると思う.そのために気をつけた点は3つある.まず,発表の前にオーディエンスを惹きつけることだ.要するにつかみのギャグを言うのだ.雰囲気にあったものを選択するのは至難な技かもしれないが,成功すればオーディエンスは皆,プレゼンター本人を見る.これは非常に大事だ.プレゼン中にプレゼンターは何度見られるだろうか?多くの場合,スライドばかりに気を取られて,スライドの脇の真っ暗な空間に立って喋っている人には注目しないだろう.それに慣れてしまったのか,プレゼンターまでスライドに「話しかけている」.(当然本来あるべき姿ではないが,)そのような状況の中,

はじめと終わりはスライドが邪魔しないので,プレゼンターは見てもらえる可能性が高い.

そこで一言いうだけでいいのだ.「アンニョンハセヨー.チョヌン,ハヤシミチヤ イムニダー」と.これは状況に合っていたようで,挨拶の時点で多くの人が笑い,自己紹介した後には拍手が起きた.一部の人はこういう行為をしたくないと思うだろう.しかし,これで初めて会うオーディエンスとつながれると思えばチャレンジする価値はあるだろう.私は,暖かい空気に包まれ,プレゼンを開始できた.プレゼン開始以降のオーディエンスは時々,私自身の方を見てくれた.

次に,簡単なことだが,レーザーポインターをスライド側の手で持つことである.こうすることで自然と体はオーディエンスの方を向く.先にも触れたが,スライドに「話しかける」のはやめたほうがいい.オーディエンスに話しかけなければプレゼンの意味はない.これについては,練習した.今まで意識していなかったことなので,変えようと思い,毎日プロジェクターをセットしてレーザーポインターを持って発表した.本番は目の前に人がたくさんいるが,この練習のおかげでそれほど強張ることなく話せた.今まではスライドと話す練習をしていたのだから,本番になって人を見て焦るのも当然だったのかもしれない.

最後に,笑顔を忘れないことである.発表中は真剣に話すが,はじめと終わりは笑顔で過ごせた.プレゼンを終わるときに笑っていると,意外とあとで顔を覚えているから不思議である.


4.練習練習練習

とにかく練習した.毎日,録音しながら,本番と同じセッティングで.今回は国際学会だったので,英語への不安のせいもあって今までにないほど練習した.練習を進めていくと,次第にその練習の質が変わっていったことに気づいた.

初めのうちは,「原稿」をスラスラ読んで,ある程度発音も悪くはないだろうと自画自賛して終えていた.この練習の質の悪さには,ネイティブの先生の前に立って練習したときに明らかになった.焦ったら何もわからなくなる.感情がこもらない.最終的に時間以内にも終わらない.このままではダメだということは容易に分かった.指導を受けた後は,スライド等は訂正し,「キーワード」で練習するように心がけた.これは「伝えたい事は何か」を考えることにもつながるが,結果として感情をこめた,Emotionalな発表への一歩だと思った.これだけは言わなければならないと思うと,そのセンテンスには熱が入る.熱が入ると,読み方に緩急が必要だと考え始めて,いろいろ試してみたくなる.

この頃にはもう体が言いたいことを覚えている.

色々考えて練習していると,原稿を読むこと無く,スラスラと喋れるようになってしまう.さらに,多少本番で間違えても,融通が効くようになっている.国際学会だからと言い訳して原稿に頼るよりも,本気で練習して体で覚えたほうが得だ.


また,この練習した分だけ,本番を終えた今では反省点も多く上がっているように思う.これも良い点の一つと考えることにして,悪い点に進もう.


【悪かった点】
1.トラブルは付きもの

スライドの一部が消えるというトラブルにあった.悪いことに,「最も重要だ」と言い放って見せたTableの多くの部分が消えたのである.焦って何もできなかった.一言謝って,なんとか補うように強調して説明した.その場はそれで乗り越えたが,後から考えると,

一言「ユーモア」を付け足して次に進めばよかった

と思う.予定外のことが起きてパニックだが,その時に落ち着いて「文字はどこかへ逃げてしましましたが,大丈夫.私の言葉を注意深く聞いてください」とか一言付け足せば良かった.オーディエンスはトラブルが生じたことくらい気づくだろうし,心配してくれる人もいるかもしれない.「ユーモア」をひとつかませることで,オーディエンスの不安を取り除き,自分を落ち着かせることができたかもしれない.トラブルは付き物だから,せめて緩和できるようになりたい.


2.意外と短調

録音を聞いた.自分では抑揚を付けて喋っていたつもりだが,意外と短調だ.しかも,やや早口になっている.緊張したせいで,力が入って,弱くすべきところを弱くできていなかったのだと思う.また,鼓動が早くなるのに合わせて,体内時計も早く回っていたようだ.もともと緊張しやすいので,今後なにか対策を考えたいものである.練習だけでは防げないのかもしれない.ただ,

「場数」という言葉で済ませたくはない.

出来る限り早く克服していきたいものである.


3.質問理解力

勉強不足と言うのかもしれない.質問の意図を理解するのにやや時間がかかりすぎた.すぐ答えていればもう一人くらいから質問をいただけたかもしれない.鍛え方はよくわからないが,物事を落ち着いて,頭の中で早く整理するよう日頃から心がけよう.勉強も広くしておく必要があると再確認した.


他,細かいこともあるが,これ以上はここには記さない.多く書きすぎるのは良くない.



さて,韓国の国際学会を終えた今,いろんな反省点が上がってきた.次回も,今回のように考えたプレゼンになるよう努力する.自分は研究をして,伝える研究者になりたい.

--
明日からはオーディエンスとしての参加.積極的になって,交流もしなければ!

2011年10月20日木曜日

印象に残すこと

知人の影響や学会発表のプレゼン準備などで,最近はプレゼンの仕方に興味を持っている.勉強するにあたって利用している(する予定である)モノと,意識するようになった点を以下にまとめておこう.

【ベンキョウ道具】
1.「シンプルプレゼンのテクニック90分」 (ガー・レイノルズ)

このムービーは何度か見たが,何度見ても勉強になる.


まずはプレゼンの組み立て方だ.これまでは,まず「パワポ」を開き,ざっくりな流れをスライドとして作り,それを詳細にまとめていた.ガーはこう言っている.

「Plan "analog"」


計画はアナログに立てるものなのだ.方法は付箋でもいいしノートでもいい.壁でもいい.とにかく,パソコンを閉じてペンで書きだすのが最もクリエイティブな流れを生み出す.実際にやってみると,思いつくままに絵を描いて言葉を書き,いいストーリーが出来てきた.パソコンで作ると思いがちだが,ぜひそんなことはやめてアナログに作ろう.


このムービーの真髄は「シンプルなプレゼン」作りだろう.そもそも「シンプル」というのは

「Simplicity」

であり,「Simplistic」ではない.つまり,自分の都合に合わせて簡単化するのではなく,相手の立場になって簡単にするのである.プレゼンの本位はオーディエンスにある.したがって,相手が容易に理解し共感できるプレゼンを目指す必要がある.そのためには相手を知らなければならない.相手が何を求めていて,何が気になって「夜も眠れない」状況に落ちいているかを考える.すると,自ずと強調すべき点が見えてくる.


また,プレゼンに「Emotion」が必要であることもよく伝わってきた.これは前から意識して発表しているつもりであるが,意外と難しい.後で録音を聴くとそこには感情は現れていないのがいつものことである.しかし,重要であることは改めて実感したので,今後こそ,ソコを目指して精進したい.笑顔も忘れないことが大切である.これはオーディエンスとのコネクションを作ることにもつながってくるだろう.


他にもたくさん学んだが,興味のある人は「何とかして」このムービーを手にして見て欲しい.絶対に変わる.


2.TED.com

このWEBサイトも非常に充実していて面白い.多くのプレゼンが日々更新されている.様々な分野に整理されており,モノによっては日本語字幕が付く(笑).20分程度で時間を選ばないし,内容も混乱するほど難しくはない.それでいて,多くのプレゼンがシンプルかつ感情的だ.

Paul Bloom: The origin of pleasure
http://www.ted.com/talks/paul_bloom_the_origins_of_pleasure.html

ジョークが非常に多いが,メッセージ性は強く,シンプルでわかりやすい.終わった後にもう一度見返した.

このような,そそられるプレゼンが無限大にある.見たことない人は必ずチェックすべきだと思う.


3.スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼン人々を惹きつける18の法則

これは言わずもがなであろう.私がジョブズに興味を持ったのはここ1ヶ月以内だと思う.その矢先に彼が亡くなったのは,ショックだった.だが,これが残した遺産は多くあるので,これらからたくさん吸収する事はできる.彼が亡くなった日には彼のプレゼンを5つくらい連続で見た.これからもずっと勉強させて頂きます.


この本は正確にはまだ読んでいない.一部抜粋で「読んだ」.プレゼンの練習・準備に関することだが,これは大変参考になる.キーワードを残して練習し,キーワードのみでプレゼンできるようにする.また,ひとつのスライドにはひとつの図表がスライドにあるはずだから,それを強調する.その写真だけでもいい.

これからの愛読書になることは間違いない.




【意識の変化】
1.10分のプレゼンはadvertise.

これはネイティブの先生にプレゼンを見てもらったときに得た言葉である.私のプレゼンは時間をオーバーしてしまった.しかも早口の英語で.終わった後に,ひたすら「君の発表内容とスライドはBusyすぎる」と言われた.スライドには文字が多い.伝えたい事が多すぎる.そこで,先生はこう教えてくれた.

「10min advertise. 40min full story.」

10分しかないのにフルストーリーを詳細に話そうとしていたのだ.これではBusyになるのは当たり前だ.しかし,「すべてを伝えるのが学会では一番望ましい」と私がずっと考えていたのも事実である.どんな質問が来るかわからないし,実験設定がわからなかったら発表の意味もない.とにかく情報を詰め込んで,「全部伝わる」スライドを作ろうとしていた.これが間違いだ.「宣伝」するつもりで作らないとそんな短い時間では何も伝わらない.このことを聞いて発表に対する考えが変わった気がする.

「全部伝える」→「ひとつ覚えて帰ってもらう」

強調すべき点はどこかひたすら考え,それを伝えるためにスライドからいらないものを省いた.これが相手に伝わるかどうかは4日後に韓国でわかるのだが,印象に残るプレゼンで有って欲しい.


2.文字は誰でも読める.

これもネイティブの先生に言われたことに関連する.スライドに多くの話す内容を書いている場合が多いが,それらを平気でしゃべる.オーディエンスとしては聞けばわかるし,読んでもわかるのだ.両方ある必要はないのだ.だから,スライドには読まない内容を書く.当然多く書かないほうがいい.強調したい場合や難しい内容であれば書く必要はある.ただ,

「読むためのスライド」ではダメ

ということだ.スライドに載せる図表は相手のイメージに残る.文字よりも絵がインパクトはある.そこに,じゃまをするようにダラダラ箇条書きに文字を羅列していてはもったいない.そんなスライドはやめて,インパクトを与えるためのスライド作りを心がけるようになった.そのためには,

「マイクロソフトのテンプレートは使わず,まっさらなスライドから作り始める」

ことが有用であろう.ビル・ゲイツは頭もよく,出来る人であるが,かつてプレゼンが下手だった.それは皮肉にも「テンプレート」のせいだったと思われる.彼はその後,素晴らしいプレゼンターへと変わった.だが,そこには「テンプレート」はなく,大きくシンプルな図表がひとつあり,その前に立って話している.

箇条書きやダサいタイトルはやめて,図表ひとつで勝負できるようになりたい.


3.情熱を.

少し上でも触れたが,情熱がない発表ほどつまらないものはない.プレゼンターはスライドと会話するように発表し,オーディエンスの半分は寝る.終わったあとで「良い発表だったね」と賞賛する.全く無意味である.そうならないためには,相手に興味を持って発表する必要がある.相手が何を知りたくてこの場にいるのか?自分は相手にどうなって欲しいのか?そういったことをまず考えよう.それがわかれば,相手に伝えたい事もスッキリまとまってくる.そうなれば,相手に伝えるために

「情熱」をもって発表しなければという衝動にかられる

のではないだろうか.そうなれば,声に抑揚が出てきて,相手の表情にも気を配るようになり,さらには自分自身が楽しくなってくると思う.

また,学会などで度々元気のない発表を「平気で」する学生がいる.本人達が平気でしているかはわからないが,絶対に損している.特に,学生である自分が言うのも変であるが,学生のように若くてその分野に入ったばかりの人は人一倍元気に発表すべきだ.おとなしい発表より,少しぐらいハプニングが起きた発表ぐらいのほうが印象に残る.名前と自分の研究を売りたいなら,もっと熱くなって発表すべきだ.私もまだ未熟ではあるが,自分が熱の入っていない発表をしてしまった日は相当落ち込む.変わりたいという意識は常に持ってひとつひとつの機会を過ごしている.少なくとも,私は情熱のあるプレゼンターになるつもりだ.


4.練習練習練習

シンプルで情熱のあるプレゼンを本番でするにはどうしたら良いか?良いスライドができた.情熱もあるつもりだ.じゃぁ,本番は大丈夫だろう.そんなことはあるわけない.練習を最低10回はすべきだ.それも,

パソコンに向かってしゃべるのではなく,プロジェクターを使い,レーザーポインターを持って,立ち上がってするべき

だ.これはネイティブの先生に注意されたことで意識するようになった.私が「レーザーポインターないけど,ボールペンでいいよ」と冗談半分で言うと,彼は「絶対ダメだ.あの部屋で借りれるから借りてきなさい」というのだ.初めは細かいなーと思ったが,その通りだ.本番を想定していない練習は意味が殆ど無い.その後,彼の前で練習したのだが,人が目の前にいるだけですべて忘れる.レーザーポインターはやたら使うので見苦しい.挙句の果てには時間を3分も超過.内容と言うよりはむしろ,練習の仕方に問題があった.基本的に原稿を見て,パソコンに向かって練習していた.本番になると景色が変わった.そのせいで,原稿の読み間違えが多発.そのたびにパニック.これが本番だったらと思うとほんとうに恐ろしい.その後からは原稿はやめて,キーワードのみを見れるようにして,本番のような環境で10回以上練習している.

「本番を想定していない練習」は練習にはカウントしないほうがよさそうである.



--
プレゼンについて本気で考えている日本人は少ないのだろうか?少なくとも良いプレゼンをしている人が多くはいない.一度,みんなで話し合う機会を設けてみるのがいいだろう.ゼミでも開こう.自分の勉強のためにも.



多くのことを考えて作った今回のプレゼン.初めての国際学会ではあるが,楽しく発表できたらと願っている.この願いは「4日後に達成されるはずだ」と信じている.

2011年9月21日水曜日

研究と出会い

最近はいろいろあった.いろいろあったが,何もまとめていなかった.たくさん旅行して,おもいっきり楽しんだ.オープンキャンパスの幹事を通して,人をまとめることが難しいことを再実感し,克服に向けて本「統率力。」サミュエル・B・バカラック著を買って読んだ.その他いろいろあった.なので,一度最近感じたことを二点の気象関連イベントをピックアップしてまとめておく.



9月4-6日 気象夏の学校2011@愛知

http://rain.hyarc.nagoya-u.ac.jp/ymss2011/


愛知県の東端の施設にて,気象夏の学校に参加しました.今年で二回目.
去年参加したときは学部生,今年は大学院生.研究もしているわけで,自然と目的は「友達作り→研究紹介」へとシフトしていた.

幸い,今年は口頭発表で申し込んでいたので,研究に関して多くの学生に話を聞いてもらえた.この春の気象学会でポスター発表したが,その時より多くの人が聞いているわけだから,研究を広めるにはもってこいの場所だと思った.

というわけなので,発表内容を「研究結果と考察」重視→「研究のモチベーションと"nontraditional" Coriolis項の意味」重視へと切り替えた.その結果,研究の結果に関する考察を十分話すことは出来なかったが,あまり有名ではない"nontraditional" Coriolis項という言葉を知ってもらうことができた.もっと効率よく話を進めれば自分の成果も最後まで話せたかもしれないが,知ってもらえたのが何より重要.今後の研究発表で,その項が何者なのか知っていて,興味を持って聞いていただけたならどれだけ嬉しいことか.発表がHPに保存されるらしいが,音声資料は正直恥ずかしい.もっと練習を繰り返して発表するべきだった.今後に活かすべき反省点である.

さらに研究を普及させるためにfacebookにそのページを作った.まだ発達前ではあるが,利用できるかぎり利用していきたい.また,発信することで自分の理解を確かめ,さらに議論することで深めることができるはずである.それを信じて,時間があるときに有意義なページへと進化させる.
http://www.facebook.com/pages/Studies-on-nontraditional-Coriolis-terms/245162775527331?sk=info
もともと研究室HPにも書いてあるので,これも充実させなくては.
http://weather.geo.kyushu-u.ac.jp/~m-hayashi/index.html

研究に関することだけが得られたものではない.今年から参加する同期が一気に増え,同じような考えを持つ人とも出会うことができた.これは今後の研究人生にずっと関わっていく出会いだと思っている.同期だけでなく,多くの先輩とも親しくなることができた.これからの気象イベントが一層楽しみになってきた.


9月6-7日 熱帯気象研究集会2011@京都
http://www-clim.kugi.kyoto-u.ac.jp/shige/tropical_met2011/

以前からずっと参加したいと思っていた研究集会.だが,夏の学校の疲れ(主に寝不足・二日酔い)が溜まっていたせいか,初日はあまり話が頭に入ってこなかった,というのが本当のところである.ポスターセッションでビールを飲んで少し回復したんではないかと錯覚を覚えるほどであった.小さなカプセルホテルで十分寝たので,二日目には復活した.そして,ポスター発表で申し込んでおくべきだったと後悔が始まるも,後の祭り.

学会の内容としては,非常に面白かった.熱帯に詳しい方々が熱心に議論する光景だけでも,私にとっては重要なものであった.何が今の熱帯では盛んに研究されているのか?何が熱帯気象の「常識」なのか?"nontraditional" Coriolis項に注目している研究者はいるのか?色々考えながら見ていた.

全体的にレーダーの話や降水の話が多かっただろうか.大規模運動や成層圏の話もあったが,学会が終わった後は,レーダーによる観測データってどんなに使えるのか?ということを一番考えていたかもしれない.研究室で使っている人がいないので,利用方法が見つかったら積極的に取り入れたいと思う.

また,ここでも人との出会いが嬉しかった.今までは熱帯を専門とする先生と知り合う機会は少なかった.学生と積極的に交流してくださる方々を除いては話すきっかけがなかなか無かった.今回は全員熱帯のプロ.昼ごはんを食べながら話せたし,ビール飲みながら話せたし,これらすべて私にとっては良い経験であり,良い出会いだ.



--
最近思うことといえば,研究に関することは重要なのは当然だが,
人との出会いに感動することが多いということ.
様々な場で積極的に出会い,それぞれのつながりを大切にしていければいいな.



それはそうとして,早く論文書き上げて次の課題にとりかからなければとの焦りが私の心の大部分を占めているのは事実.完成させて,つぎのステップへ.これから韓国での学会があるし,コロキウム発表もあるし,できればAMS主催の学会にも申し込みたいし,とにかく時間はない.なんでも集中してがんばろう.

2011年7月28日木曜日

Landu and Maloney 2011を読んでみたが,なんだかな

JMSJとパラ見していて見つけた論文,

Landu, K. and E. D. Maloney, 2011: Effect of SST Distribution and Radiative Feedbacks on the Simulation of Intraseasonal Variability in an Aquaplanet GCM., J. Meteor. Soc. Japan, 89, 195-210.

と,それに関連した論文

Maloney, E. D., A. H. Sobel and W. M. Hannah, 2010: Intraseasonal Variability in an Aquaplanet General Circulation Model., J. Adv. Model. Earth Syst., 2, Art. #5, 24 pp.

をひと通り読んだ.気になったのは,Maloney et al. (2010, hereafter M10)で,CAM3.1を用いてMadden-Julian Oscillation (hereafter MJO)の再現に成功したという雰囲気の文面があったから.

そもそもCAM3.1はプリミティブ方程式系を用いている.NICAMでMJOの再現に成功したのは非静力学モデルにして計算したからだと思い込んでいた私にとっては信じがたい論文であった.だからかなり疑いながら読むことにした.

Landu and Maloney 2011(hereafter LM11)はM10を元に拡張させた論文だったので,まずはM10を読んだ.この論文で新しいポイントとしては,

1.赤道付近を除き,南北SST勾配を現実的な値の四分の一にした.

という一点だろう.「なんで1/4??」という疑問は消えない.まぁ,感度実験なんてそんなもんだと言い聞かせて読み進める.

行った実験は3タイプ.与えるSSTを変えて,それによる応答を調べている.
1.現実的SST
2.帯状対称SST
3.1/4SST勾配

ざっくり結果の印象を述べるなら,
1.MJOっぽいのはできたが,降水の分散は赤道を挟んで2つのピークを持つ.帯状風は高周波をかなり含んでいる.降水については帯状波数が1~2より大きいところにもピークを持つ.
2.MJO的でない.
3.赤道より南に強い降水の分散ピークを持つ.東西風偏差も強いため,線形的なWISHEではないが,非線形なWISHEが東進を遅くするのに効いているかも.観測で見られる周波数にかなり近い.

といった感じか.要するに,
「1/4SST勾配の実験が最もよくMJOを再現できた.ただし,その強度が大きすぎるし,湿度偏差の傾いた鉛直構造は再現されていない.」

ここで,1/4SST勾配と言われても騙されているとしか思えない…という疑問が当然生じる.それについてはConclusions and Discussionで考察されている.1/4SST勾配がどういう状況かというと…
1.中緯度からの傾圧性の影響を取り除いた.
2.赤道以外の熱帯域が通常より高温となっている.
とか.1.からは中緯度との相互作用がMJOを作っている可能性を除外して,2.からは不安定性を増強する結果となったとしている.

MJOの再現というよりも,むしろMJOが不安定化させる原因を,かなり特別な条件を作ることで探した論文と考えれば納得できそう.そういうことにしてLM11にとりかかる.

だいたい言っていることは同じだが,新しく取り入れた実験は

1.降水偏差による長波加熱偏差を取り除いた実験(Fixed RADiation; FRAD)

である.目的は,雲放射と湿潤放射のMJOにおけるfeedbackの影響を理解すること.その他には,M10と同様な

2.1/4SST勾配,帯状非対称実験(QMZA)
3.1/4SST勾配,帯状対称実験(QMZS)
である.その結果,QMZAでなくて,振幅は約半分小さいが,FRADでもMJOを再現できた.

FRADでうまくMJOを再現できたことから,放射偏差の強まりや弱まりは位相速度に影響を与えないことがわかった.FRADとQMZAで遅い東進速度が再現されたのは,平均帯状風によって降水の西側で比湿収束が大きいことによる.したがって,帯状非対称での平均帯状風が重要である.(ついでに,本実験で背の低い雲(浅い対流)が再現できていないことの理由も書いてあった.)

つまり,MJOを不安定化させるには,雲放射とwind-evaporation feedbackの両方が必要である.


雲の放射と非線形的なWISHEをうまく取り入れて,SSTを工夫して入れたらMJOがプリミティブ方程式系でも再現されるようだ.うーん…,まだしっくりこない.

こりから色々考察をふくらませて,最終的に新しいMJOメカニズムに迫ることが出来れば,面白い実験だと言えるだろう.納得できないのは,まだこれらの論文を私が理解できていないからというのが大きいかもしれないので,もう少し正確な理解に務める必要は当然ある.いくつか勉強すべきものも見つかった気がする.

1.非線形なWISHE
2.中緯度が赤道に与える影響
3.観測からわかるMJOとSSTとの関係

NICAMのデータも見てみたいな.観測データの解析で研究をしてみたい.でも,その前に論文投稿してしまわなくちゃ.早く書くよう注意されたので,それに集中しよう.

(注意: 内容が正しいかどうかはわかりません.)

2011年7月3日日曜日

失ってはいけないもの

新しい何かを得るためには,今まで持っていた何かを失うものなのだろうか.そうだとしたら,失うものと得るものの量は等しいのだろうか.



そんなことを考えていたら,なんだか苦しくなった.



ここ最近の話ではあるが,得るものがない割には失いつつあるものが多くある気がして,怖くなることがしばしばある.具体的な物ではないが,精神的に何かを失い続けている気がする.本当に何かわからないけど,そんな気がすごくする.



例えば,日々の楽しみ.趣味といえば,音楽や食事,旅行といったところだろう.昔は釣りやゲーム,サッカーなどのスポーツをしてたけど,今ではほとんどしていない.

ゲームはどうでもいいが,釣りとスポーツは時々無性にしたくなる.結局,いつもしないのだが.最近は旅行にも行っていないな.どこかに行くのは学会のついでの観光だけかな.まぁ,それはそれで楽しいけど,思いっきり旅行して新しい景色を堪能するような感覚は全くない.学会の場合は東京が多いから仕方ない.

時間の使い方を変えたいと思いアルバイトを辞めてから,外食を控えるようになった.飲み会は別だが,定食にお金を払うのがもったいないと思うようになり,自炊するのが定番になった.これはこれで良いことだと思うが,夕食時に研究室の人や友だちと話す機会が以前より減ったのは寂しいものだ.

音楽も,サークルを休止してから接する機会がめっきり減った.今日は久々に大音量で音楽を聴きまくった.心地良く感じた.しばらくの間,音楽に浸るという楽しみすら忘れかけていたのかもしれない.



他に打ち込むことができたから,それらを忘れている.そうなのかもしれないが,本当に忘れてしまうのはもったいない.


今打ち込んでいることは,間違いなく大学院での研究活動だ.これのために大学に入ったんだから,本気にならないわけがない.ただ,なんとなく最近はメリハリが悪くなってきて,効率が落ちている.単に研究が難しくて進まないだけかもしれない.

でも,壁がでかいというよりは,壁を乗り越えようとするパワーが小さくなっているように思えてならない.ガムシャラに立ち向かう気力が生み出せない.


どうしたものか.ガムシャラにパワーで乗り越えてくるほうが得意だと思っていたのに,何だこのザマは.こんなことで悩むとは思ってもいなかった.何が変わったのか.



楽しむことを忘れているのかも.



もっと楽しむことを見つけて,存分に楽しさを味わなきゃいけない.それがメリハリであり,それがパワーになる.そしたら苦しくてもガムシャラになれるのではないだろうか.


いま失いかけていたのは,たくさん持っているはずの「楽しむこと」だったのかも.夢を叶える作業と引換に忘れてしまうにはもったいないものだ.

そうだな….たまにはどこか遠くに行って,たまには音に埋れて,たまにはボールでも蹴るとしようか.それが今,必要なんだと思うから.

2011年5月23日月曜日

感じた嬉しさと見えてきた課題

2011年5月21日,気象学会春季大会にてポスター発表を行なった。感じたことをまとめてみる。


1.発表に興味をもっていただけた嬉しさ

まず,気象庁数値予報課の方をはじめとして多くの人が自分の研究テーマに興味をもってくれたことに驚きと嬉しさを覚えた。学会が始まるまでは自分の研究はマニアックで,力学が多少複雑なためにあまり多くの方が興味を示すとは思っていなかった。むしろ,ポスター発表してもあまり人が集まらないのではないかと不安ばかり募っていた。怖くて眠れず,夜中に五反田を徘徊するくらいだったし,僕としては最上級の緊張だと思う。

当日の朝ポスターを貼っても緊張は止まらず,いつものごとく手が痺れた。緊張するといつも手がしびれる。ポスター会場を後にし,口頭発表を聞きに会場へ向かった。やはり発表が頭に入ってこないので,一時間早いが10時半にはポスター会場に移動して一人頭の中で練習をした。それすら頭に入っていない気がしたが,ひたすら資料に目を通し続けた。先輩と会場前で会ったときに,「覇気がない顔だね」と指摘されて少し正常を取り戻した気はする。

少し疲れたので11時に自分のポスターの前に行ってみた。すると,もう人が3人ほど立っている。心の準備はできていなかったが,「説明いたしましょうか」と声をかけた。「はい」と言われた。この瞬間が気象学会デビューだった。とにかく練習した通りに話し始め,相手が理解できているかを確かめながら結果,考察へと進んだ。完全とは言えないかもしれないが,相手の方が自分の研究について理解してくれて,最後に面白い研究だとコメントしてくれた。終えたときには11時半を回っており,気が付けば会場は人で溢れていた。僕の周りにも人が増えていた。最初の方々が去ったあと,「説明してもらえませんか」と言われた。僕は「はい」と言った。これを4回くらい繰り返したのだろうか。3回目を終えた頃にはA4サイズのミニポスターは全てなくなってしまった。次回は30枚準備しよう。

人が途絶えることなくあっという間に13時を回った。本来なら12時半までのポスター発表で時間をオーバーするまで話し続けることができたことを嬉しく思う。最後に卒業した先輩とその友達が説明を求めてくれた。昼ご飯は諦めた。

後で聞いた話だが,ポスターを聞きに来てくれた方々の中には気象庁のメソモデルを作った方や,気象庁で働いている先輩の上司の方,僕が注目しているテーマに関連する研究をこれまでしてきた方などがいらしたらしい。嬉しい限りだが,その時に知っていればなお良かった。次回からは名刺をつくるかどうかして,お互いに名前を確認するような流れを作ろうと思う。

発表を聞いてくれたたくさんの方々のためにも今後も精一杯努力して,論文投稿や研究発表をしていきたい。



2.自分の理解度の未熟さ

人がたくさん来てくれたら,その分たくさんの質問やアドバイスが流れ込んでくる。自身の研究に対する質問はある程度答えることができたが,最も多かった質問「方程式を解いているときの設定」にはうまく対応できなかった。時間発展問題ではなく,今のところは変数全てに波型を与えて解いている。これでは初めて聞く人にとっては理解できないのだろう。確かにこの手の問題は通例時間発展問題として解くことが多い。だから聞き手は時間発展問題であると思い込んで話を聞いているのかもしれない。あまり波型の話は説明していないのだから,このような人たちは思い込んだまま結果へ移るだろう。そうすると一気に「関係の無い疑問」が生まれ出して,最後には説明についてこなくなる。なので,今後発表するときは問題設定をいかに強調しながら簡潔に説明できるかにも力を入れようと思う。

いただいたアドバイスもたくさんあるが,理解できずにあまり覚えれなかったものがいくらかある。特に,「不安定」という言葉が出てくると全くまともな答えができていない。時間発展問題ではないから不安定にはならないと思うとか,波型が実数だから成長率とは関係ないとか,ある意味適当に流していた。不安定について勉強を始めなければ

ひとつ気になる質問があった。それは「non-traditionalコリオリ項が圧力の位相をずらす効果を持っているといったが,それは実際的にはどういう状況なのか」といった内容だった。彼女はしきりにメモを取りながら聞いていたので,彼女にとってすごく重要な質問だったのだろう。順圧的構造が傾圧的構造になるのだから,物理的に意味があるはずなのだが,はっきりと答えれなかった。明日からはこの点を深く勉強しなくてはならない。今後の課題が見つかったのは良い収穫だ。



3.モチベーション増大

発表を通じて早く論文に出す必要性を感じた。論文にすることで興味を持つ人たちが読んでくれる。より深く理解してもらえたら,より発展的な議論をすることができる。早速今週中には構成を決定して,日本語で書きはじめよう。余談だが,飲み会でタイトルを「true or false?」のように「or」を使って書いたら面白いというアイディアをいただいた。大変面白いが,今回は避けることにしようと思う。

発表以外でもモチベーションが上がったきっかけはある。ほかの人の発表を聞いていて,以前と着眼点が変わったのに気づいた。自分の研究と関わりがあるものを自然と求めて(しまって)いる。今回の学会中にいくつか自分の研究が活かせそうな研究があった気がする。そういったところにも注意しながら研究の意義を増やしていきたい。自分の研究の結果を元にほかの研究者と議論できるようになりたい。




他にも感じたことはたくさんあるが,やはり研究を知ってもらえたことが一番嬉しかったことだ。今後も新しいことを見つけて,どんどん積極的に公表・議論していこう。

2011年5月14日土曜日

人を楽しませるプレゼンをしなければ

自分の発表を聞きに来てくれる人がいるなら,全力でその人に伝えなくてはならない。ただ淡々と伝えるのではなく,相手を楽しませて引き込まなくてはならない。


そのためにはどうしたら良いのだろう?



気象学会春季大会を控えた最後の週末。今回の学会は私にとって初めての全国規模の発表である。ポスター発表で参加するのだが,やはり不安なのは発表を聞きに来てもらえるかというところだ。

以前,学会の聴講に行った際にポスター発表を聞いてくれと必死に足止めされたことがある。それぐらいのガッツは必要かもしれないが,出来ることなら人が集まるような雰囲気を作り出したい。



何が必要だろうか。



最も大切なのは,やはりポスターの第一印象だろう。わかりにくそうで楽しそうに見えないポスターでは人は集まらない。

では,どうしたら印象の良いポスターに仕上がるか?ぱっと見たときに何を調べて何がわかり,その結果がその分野にどんな影響を与えるかがわかれば,興味がある人は集まるのではないだろうか?じっくり見なければ何を書いているのかわからないポスターではせっかくのチャンスを捨ててしまいかねない。

なので,結論は目立つ場所に簡潔に書き,重要性をアピールできる文章となるよう努力しよう。



第一印象だけでは聞いていて飽きて帰ってしまう可能性がある。内容が伴わなければ意味がないのは当然だ。研究の結果を出すのが大事なのは分かっているが,「不運にも」インパクトのある結果ではないこともある。

その場合はどうしたらよいか?

出来ることはただひとつ。話し方を意識して重要性を引き立てるしかない。そのための道具として見やすい図や簡潔なまとめ方も必要となる。できる限界までポスターを美しくし,あとは話すときに相手の理解を確かめながら順序よく説明するのが良いだろう。相手が理解してくれて初めて相手は聞き手として楽しめる。したがって,決してポスターが完成して安心してはならず,説明の練習も必須である。これが無くてはせっかくのポスターも台無しである。

「いかに自分が出した結果に意味があるのか」を伝えるための努力を惜しんではいけない。



あとは本番,清潔感のある身なりでポスターの前に立っておくことだ。それと,自分が楽しそうに発表することも重要なポイントだろう。感情のない発表は退屈だ。


ポスターと自身の第一印象を引き上げて,しっかりとした説明で自分の研究の重要性をアピールし,相手に楽しんでもらおう。

2011年4月11日月曜日

人に伝えること

縁あって,4月9日に気象予報士会を見学してきた。

気象予報士会とは,気象予報士の資格を持った方が集まって,自己紹介・ディスカッションなどをする会。今回の会場は福岡市のテレビ局,RKB。熊本や福岡,山口の方が多かった。テレビ局に入るのも初めてのことだったので,すべてが新鮮だった。アナウンサー疑似体験までさせてもらえるとは思ってもいなかったな。



今回参加したことで,一般の人に気象学を伝えることについて具体的に考えるようになった。



気象予報士会に集まる人々の大部分が気象と関係ない仕事を持つお父さんたち。気象予報士を取ったきっかけというのは,「宇宙や天気への興味」や「仕事に活かせる」など。中には「ボケ防止」という人も(おそらくジョーク)。


参加者の中にはテレビ局で活躍するアナウンサーの方も。

彼の話は面白い。なんで面白いのか?
漫才をしているわけではないし,僕が好きな大気力学の話をしているのでもないのに。



気象予報士として真面目な話をしつつも,だれでも知っていて共感できることを話の節々に盛り込んでいるから。これだろう。

季節の生き物や植物,言葉などを話題に上らせ,時には歌を唄いだしたり。表現力が非常に豊か。ただ面白おかしいのではなく,どこか知的だからまた説得力もある。

その知識は「誰でも知っている」と上では述べたが,その知識を人に伝える材料に昇華させるには多大な努力を要しただろう。彼の場合は「好きだから覚えた」といったところなのかもしれないが,そうだとしても敬意を表さずにはいられない。


それだけではない。ほかの人が発表するときにはまとまった意見も当然述べるし,もし他人が不快になるようなことを発表者がしゃべっているならその嫌悪感を濁すようにフォローする。このフォローがまた優しく思えた。お酒の席でも雑談の中に様々な知識を盛り込んで周囲の意識を集めている。



彼は僕が持っていないものをたくさん持っている。一般の人に気象を伝えることができるようになりたいというのは,以前から抱えている僕の目標の一つだ。その達成までの道のりは長いが,彼を見習って

1.暦や植物,動物と季節の関連に興味を持って覚える。
2.様々なシチュエーションでみんながわかるような気象の話をしてみる。

という具体的な目標をふたつ掲げておこう。

2011年4月3日日曜日

人と人の出会いは素晴らしき偶然

人と人が出会うのって,ものすごい偶然の繰り返しの上にある。
そう改めて考えるきっかけとなった。

4月2日土曜日,オクトーバーフェスト2010 in 福岡で知り合ったイギリス人・Nickに誘われてお花見へ。会場は舞鶴公園@福岡。

会場には僕にNickを紹介してくれた方Aがいた。彼Aはこんな話をしてくれた。

「君と僕Aが出会ったのって不思議だよね。偶然僕Aの知り合いBがオクトーバーフェストに君を誘ったから知り合えた。そもそも僕Aと彼女Bが知り合ったものすごい偶然で,不思議な出会いだった。もし僕Aと彼女Bが知り合ってなかったら,当然君と僕Aは知り合っていない。そしたら,君とNickも知り合っていなかったし,今日君のお友達とも知り合うことはなかっただろうね。」

僕とBが知り合ったのもすごい偶然だったんだから,それから出会う人とのつながりはさらにすごい偶然。もっと遡っていったら,全て奇跡としか言えない。



生まれた時から常に,誰でもたくさんの人と出会い続けている。直接的に自分の人生に影響を与えた人との出会い,あまり関わりがない(と思っているような)人との出会いなど,いろいろ。そんなたくさんの奇跡が今の自分を形成している。

全ての奇跡(出会い)に感謝しなくてはならない。

だからこそ,人との新たな出会いのチャンスを拒むことのないように生きていこう。

2011年3月29日火曜日

今でも進化し続ける方程式系

研究に関連して,かなり新しい論文をひとつ読んだ。

Paul J. Dellar, 2011: Variations on a beta-plane: derivation on non-traditional beta-plane equations from Hamilton's principle on a sphere. J. Fluid Mech., DOI: 10.1017/S0022112010006464 Published online: 14 Mar 2011


内容をざっくりまとめるなら,
1.Hamiltonの原理から,力学的に一貫したβ面方程式系を導いた。
2.従来のものと異なり,緯度変化も考慮したnon-traditionalコリオリ項を含んでいる。
3.近似により,様々なタイプのβ面方程式系を作った。
といったところだろう。


自分の研究では赤道β面方程式系を用いているが,緯度変化を考慮しないnon-traditionalコリオリ項を含んでいる。この論文によると,緯度変化を示す項のみを含ませるのではなく,traditionalコリオリ項にもz依存のファクターをかける必要がある。また,単純にテイラー展開で緯度変化を表現してはいけない。non-traditionalコリオリ項の緯度変化を考慮しなければならないときには参考にしたい。


力学的一貫性(エネルギー,角運動量,渦位の保存性)については,truncated Lagrangianの対称性によってNoetherの定理を適用することで保証している。




このように,現在でも気象の基礎方程式系は進化している。自分も気象学を進化させる論文を目指して研究を頑張ろう。


注)内容の解釈は完全でない可能性があります。

卒業式・謝恩会を終えて,研究の日々へ。

3月24日,理学部を卒業した。
学部4年間を振り返ると,こうしておくべきだったと悔やまれることが多くある。

まずは,田島寮での生活。自分は明らかに「寮生らしく」なかった。
寮ではたくさんの行事があり,みんなそれに熱中し,楽しんでいた。僕も最初の頃はバカなことばかりして楽しかったが,途中から行事に熱くなれなくなった。それで沢山の人に不快な思いをさせたかもしれない。少なくとも邪魔はしていないが。そんな生活に心苦しさを覚えて1年半住んだ寮を去った。

もっと積極的に楽しむべきだった。

2つ目は,4年間お世話になったバンドサークル,Be-Rock。これも田島寮でのそれと同じような後悔が残る。
Be-Rockは基本的に皆が皆のためにそれぞれの仕事をしてライブをする。そんな中で,自分が選んだ仕事がうまくできず(難しかった),次第に仕事を避けるようになってしまった。こうなってしまってからサークルに顔を出すのが億劫になってきた。初めのころはバンドでギター弾くのが楽しくてたまらなかったし,部会で人に会うのがうれしかった。今でもそうだが,それより仕事を避けたい気持ちが大きくなってしまっていた。このことはほんとに後悔している。

もっと仕事を素直に受け入れ,最大限の努力をすべきだった。


2つとも「もっと素直になる」という目標に帰着すると考えている。これらの後悔が今後の自分を成長させたと思えるよう,もっと素直になろう。


他にも後悔はあるが,成功した面も当然ある。細かく考えれば多々あるが,一つ挙げるとすれば,研究生活だろう。
学部3年生までは勉強を必死にしていたが,それがどこで生きてくるかなどわからなかった。明らかに気象に役立ちそうなものは気合を入れて学んだが,ほかの授業についてはなんの役に立つか疑問に思いながら学んだ。

その答えは研究室にあった。今までそれとなく学んでいたことが,突然必要になったりする。その都度勉強しなおし,一つひとつ自分のものにする。そうして次のステップへ進む。これを繰り返していくうちに,今までと学ぶことに対する考え方が変わった。

受動的ではなく,能動的な勉強。何かをしたいからあるものを自分で学ぶ。これは昔から先生に言われていた気がするが,正しくわかったのは大学を終える今だ。研究して,その都度学び,さらに研究していく。これを楽しいと思わせてくれたのは,先輩であり,同級生であり,先生だ。みんなよき仲間であり,常にライバル。周囲の人の存在をありがたく感じながら,これからの大学院生活を毎日過ごしていこう。

周囲の人は皆仲間でありライバル。この意識が自分を成長させてくれる。

2011年3月23日水曜日

幹事をすることで

今年度の学科謝恩会の幹事。
いよいよ明日がその当日。

大変だった,今でもまだ追われてる。もう少し手際よく早めに始めるべきだったのは一つの反省点。

何が一番大変だったかというと,「人に仕事を振り分けること」だろう。
すべて自分でやろうとしていた。人にさせるよりも自分がしたほうが早いと思ったし,人にさせるのが申し訳なかった。…この考え方が自分を追いつめた。

最近見る夢は毎晩悪夢。追いかけられ,人が亡くなり,叫び泣く。突然目が覚める。

たぶん,やらなきゃいけないことが山ほどあると変な夢を見るのだろう。そう思って,今では人にある程度任せるようにした。そしたら,周りにたくさんの人がいることに気付いた。今までの自分が馬鹿らしく思えるほどに。

幹事を今回やってきてよかったと考えれるのは,「周りの人の存在に気付けた」ことだ。当然今まで知らなかったわけではない。ただ,自分が想像していたより,自分はみんなに頼れていなかった。

明日はみんなで謝恩会を作る。みんなに頼ろう。それでまた成長できる。

2011年3月21日月曜日

似ている研究

 自分がしている研究のキーワードを,いくつか論文検索してみた。

海洋の分野では最近盛んに研究されているのか?と思わせる論文がちらほら。
1.Lucas and Rousseau 2009
・海洋におけるnontraditional Coriolis項の影響を定量的に調査した。
・時間発展問題で解いて,時間平均した流線を見ることで影響を確認して,地形の影響を除く場合に10%ほどの影響,地形がある場合に数%の影響があった。
・準静力学モデルの使用を薦めている。

大気の分野でも意識している人はいるみたい。
2.Paul E. Roundy 20xx
・非弾性モデルに波型を与え,解析的に解いた。
・観測データの解析結果とモデルに適当な数値を与えた場合の結果とを比較した。
・解析解から,nontraditional Coriolis項により赤道波の位相が数%ずれることを示した。
・条件が非常に多く,さらに時間発展的には解けないという欠点がある。

前者のような分野の違う論文は参考にしていきたい。他にも,meso-scale現象における影響はこれまでに多く調べられているはずなので,そちらも参考にしたい。
後者については少し複雑な心境である。自分より先に示されては困るといった意味だが,現実を受け止めてしっかり読まなければならない。幸い,自分の研究とは性格は違うようだ。

今後も自分の研究をしっかり見つめて,深く論理的に突き詰め,さらには自身の研究に関する論文を執筆したい。そんな意欲がわいた一日だった。

What can I do to be big?

Bigになるためには何をすればいいんだろう?

すぐになれれば苦労はしない。だから毎日を積み重ねる。
何も考えない,「無駄な日」くらいあってもいい。
「後悔される日」を一日でも少なくしよう。
そんな毎日を続けることで,Bigに近づける気がする。