2011年7月28日木曜日

Landu and Maloney 2011を読んでみたが,なんだかな

JMSJとパラ見していて見つけた論文,

Landu, K. and E. D. Maloney, 2011: Effect of SST Distribution and Radiative Feedbacks on the Simulation of Intraseasonal Variability in an Aquaplanet GCM., J. Meteor. Soc. Japan, 89, 195-210.

と,それに関連した論文

Maloney, E. D., A. H. Sobel and W. M. Hannah, 2010: Intraseasonal Variability in an Aquaplanet General Circulation Model., J. Adv. Model. Earth Syst., 2, Art. #5, 24 pp.

をひと通り読んだ.気になったのは,Maloney et al. (2010, hereafter M10)で,CAM3.1を用いてMadden-Julian Oscillation (hereafter MJO)の再現に成功したという雰囲気の文面があったから.

そもそもCAM3.1はプリミティブ方程式系を用いている.NICAMでMJOの再現に成功したのは非静力学モデルにして計算したからだと思い込んでいた私にとっては信じがたい論文であった.だからかなり疑いながら読むことにした.

Landu and Maloney 2011(hereafter LM11)はM10を元に拡張させた論文だったので,まずはM10を読んだ.この論文で新しいポイントとしては,

1.赤道付近を除き,南北SST勾配を現実的な値の四分の一にした.

という一点だろう.「なんで1/4??」という疑問は消えない.まぁ,感度実験なんてそんなもんだと言い聞かせて読み進める.

行った実験は3タイプ.与えるSSTを変えて,それによる応答を調べている.
1.現実的SST
2.帯状対称SST
3.1/4SST勾配

ざっくり結果の印象を述べるなら,
1.MJOっぽいのはできたが,降水の分散は赤道を挟んで2つのピークを持つ.帯状風は高周波をかなり含んでいる.降水については帯状波数が1~2より大きいところにもピークを持つ.
2.MJO的でない.
3.赤道より南に強い降水の分散ピークを持つ.東西風偏差も強いため,線形的なWISHEではないが,非線形なWISHEが東進を遅くするのに効いているかも.観測で見られる周波数にかなり近い.

といった感じか.要するに,
「1/4SST勾配の実験が最もよくMJOを再現できた.ただし,その強度が大きすぎるし,湿度偏差の傾いた鉛直構造は再現されていない.」

ここで,1/4SST勾配と言われても騙されているとしか思えない…という疑問が当然生じる.それについてはConclusions and Discussionで考察されている.1/4SST勾配がどういう状況かというと…
1.中緯度からの傾圧性の影響を取り除いた.
2.赤道以外の熱帯域が通常より高温となっている.
とか.1.からは中緯度との相互作用がMJOを作っている可能性を除外して,2.からは不安定性を増強する結果となったとしている.

MJOの再現というよりも,むしろMJOが不安定化させる原因を,かなり特別な条件を作ることで探した論文と考えれば納得できそう.そういうことにしてLM11にとりかかる.

だいたい言っていることは同じだが,新しく取り入れた実験は

1.降水偏差による長波加熱偏差を取り除いた実験(Fixed RADiation; FRAD)

である.目的は,雲放射と湿潤放射のMJOにおけるfeedbackの影響を理解すること.その他には,M10と同様な

2.1/4SST勾配,帯状非対称実験(QMZA)
3.1/4SST勾配,帯状対称実験(QMZS)
である.その結果,QMZAでなくて,振幅は約半分小さいが,FRADでもMJOを再現できた.

FRADでうまくMJOを再現できたことから,放射偏差の強まりや弱まりは位相速度に影響を与えないことがわかった.FRADとQMZAで遅い東進速度が再現されたのは,平均帯状風によって降水の西側で比湿収束が大きいことによる.したがって,帯状非対称での平均帯状風が重要である.(ついでに,本実験で背の低い雲(浅い対流)が再現できていないことの理由も書いてあった.)

つまり,MJOを不安定化させるには,雲放射とwind-evaporation feedbackの両方が必要である.


雲の放射と非線形的なWISHEをうまく取り入れて,SSTを工夫して入れたらMJOがプリミティブ方程式系でも再現されるようだ.うーん…,まだしっくりこない.

こりから色々考察をふくらませて,最終的に新しいMJOメカニズムに迫ることが出来れば,面白い実験だと言えるだろう.納得できないのは,まだこれらの論文を私が理解できていないからというのが大きいかもしれないので,もう少し正確な理解に務める必要は当然ある.いくつか勉強すべきものも見つかった気がする.

1.非線形なWISHE
2.中緯度が赤道に与える影響
3.観測からわかるMJOとSSTとの関係

NICAMのデータも見てみたいな.観測データの解析で研究をしてみたい.でも,その前に論文投稿してしまわなくちゃ.早く書くよう注意されたので,それに集中しよう.

(注意: 内容が正しいかどうかはわかりません.)

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