2011年10月20日木曜日

印象に残すこと

知人の影響や学会発表のプレゼン準備などで,最近はプレゼンの仕方に興味を持っている.勉強するにあたって利用している(する予定である)モノと,意識するようになった点を以下にまとめておこう.

【ベンキョウ道具】
1.「シンプルプレゼンのテクニック90分」 (ガー・レイノルズ)

このムービーは何度か見たが,何度見ても勉強になる.


まずはプレゼンの組み立て方だ.これまでは,まず「パワポ」を開き,ざっくりな流れをスライドとして作り,それを詳細にまとめていた.ガーはこう言っている.

「Plan "analog"」


計画はアナログに立てるものなのだ.方法は付箋でもいいしノートでもいい.壁でもいい.とにかく,パソコンを閉じてペンで書きだすのが最もクリエイティブな流れを生み出す.実際にやってみると,思いつくままに絵を描いて言葉を書き,いいストーリーが出来てきた.パソコンで作ると思いがちだが,ぜひそんなことはやめてアナログに作ろう.


このムービーの真髄は「シンプルなプレゼン」作りだろう.そもそも「シンプル」というのは

「Simplicity」

であり,「Simplistic」ではない.つまり,自分の都合に合わせて簡単化するのではなく,相手の立場になって簡単にするのである.プレゼンの本位はオーディエンスにある.したがって,相手が容易に理解し共感できるプレゼンを目指す必要がある.そのためには相手を知らなければならない.相手が何を求めていて,何が気になって「夜も眠れない」状況に落ちいているかを考える.すると,自ずと強調すべき点が見えてくる.


また,プレゼンに「Emotion」が必要であることもよく伝わってきた.これは前から意識して発表しているつもりであるが,意外と難しい.後で録音を聴くとそこには感情は現れていないのがいつものことである.しかし,重要であることは改めて実感したので,今後こそ,ソコを目指して精進したい.笑顔も忘れないことが大切である.これはオーディエンスとのコネクションを作ることにもつながってくるだろう.


他にもたくさん学んだが,興味のある人は「何とかして」このムービーを手にして見て欲しい.絶対に変わる.


2.TED.com

このWEBサイトも非常に充実していて面白い.多くのプレゼンが日々更新されている.様々な分野に整理されており,モノによっては日本語字幕が付く(笑).20分程度で時間を選ばないし,内容も混乱するほど難しくはない.それでいて,多くのプレゼンがシンプルかつ感情的だ.

Paul Bloom: The origin of pleasure
http://www.ted.com/talks/paul_bloom_the_origins_of_pleasure.html

ジョークが非常に多いが,メッセージ性は強く,シンプルでわかりやすい.終わった後にもう一度見返した.

このような,そそられるプレゼンが無限大にある.見たことない人は必ずチェックすべきだと思う.


3.スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼン人々を惹きつける18の法則

これは言わずもがなであろう.私がジョブズに興味を持ったのはここ1ヶ月以内だと思う.その矢先に彼が亡くなったのは,ショックだった.だが,これが残した遺産は多くあるので,これらからたくさん吸収する事はできる.彼が亡くなった日には彼のプレゼンを5つくらい連続で見た.これからもずっと勉強させて頂きます.


この本は正確にはまだ読んでいない.一部抜粋で「読んだ」.プレゼンの練習・準備に関することだが,これは大変参考になる.キーワードを残して練習し,キーワードのみでプレゼンできるようにする.また,ひとつのスライドにはひとつの図表がスライドにあるはずだから,それを強調する.その写真だけでもいい.

これからの愛読書になることは間違いない.




【意識の変化】
1.10分のプレゼンはadvertise.

これはネイティブの先生にプレゼンを見てもらったときに得た言葉である.私のプレゼンは時間をオーバーしてしまった.しかも早口の英語で.終わった後に,ひたすら「君の発表内容とスライドはBusyすぎる」と言われた.スライドには文字が多い.伝えたい事が多すぎる.そこで,先生はこう教えてくれた.

「10min advertise. 40min full story.」

10分しかないのにフルストーリーを詳細に話そうとしていたのだ.これではBusyになるのは当たり前だ.しかし,「すべてを伝えるのが学会では一番望ましい」と私がずっと考えていたのも事実である.どんな質問が来るかわからないし,実験設定がわからなかったら発表の意味もない.とにかく情報を詰め込んで,「全部伝わる」スライドを作ろうとしていた.これが間違いだ.「宣伝」するつもりで作らないとそんな短い時間では何も伝わらない.このことを聞いて発表に対する考えが変わった気がする.

「全部伝える」→「ひとつ覚えて帰ってもらう」

強調すべき点はどこかひたすら考え,それを伝えるためにスライドからいらないものを省いた.これが相手に伝わるかどうかは4日後に韓国でわかるのだが,印象に残るプレゼンで有って欲しい.


2.文字は誰でも読める.

これもネイティブの先生に言われたことに関連する.スライドに多くの話す内容を書いている場合が多いが,それらを平気でしゃべる.オーディエンスとしては聞けばわかるし,読んでもわかるのだ.両方ある必要はないのだ.だから,スライドには読まない内容を書く.当然多く書かないほうがいい.強調したい場合や難しい内容であれば書く必要はある.ただ,

「読むためのスライド」ではダメ

ということだ.スライドに載せる図表は相手のイメージに残る.文字よりも絵がインパクトはある.そこに,じゃまをするようにダラダラ箇条書きに文字を羅列していてはもったいない.そんなスライドはやめて,インパクトを与えるためのスライド作りを心がけるようになった.そのためには,

「マイクロソフトのテンプレートは使わず,まっさらなスライドから作り始める」

ことが有用であろう.ビル・ゲイツは頭もよく,出来る人であるが,かつてプレゼンが下手だった.それは皮肉にも「テンプレート」のせいだったと思われる.彼はその後,素晴らしいプレゼンターへと変わった.だが,そこには「テンプレート」はなく,大きくシンプルな図表がひとつあり,その前に立って話している.

箇条書きやダサいタイトルはやめて,図表ひとつで勝負できるようになりたい.


3.情熱を.

少し上でも触れたが,情熱がない発表ほどつまらないものはない.プレゼンターはスライドと会話するように発表し,オーディエンスの半分は寝る.終わったあとで「良い発表だったね」と賞賛する.全く無意味である.そうならないためには,相手に興味を持って発表する必要がある.相手が何を知りたくてこの場にいるのか?自分は相手にどうなって欲しいのか?そういったことをまず考えよう.それがわかれば,相手に伝えたい事もスッキリまとまってくる.そうなれば,相手に伝えるために

「情熱」をもって発表しなければという衝動にかられる

のではないだろうか.そうなれば,声に抑揚が出てきて,相手の表情にも気を配るようになり,さらには自分自身が楽しくなってくると思う.

また,学会などで度々元気のない発表を「平気で」する学生がいる.本人達が平気でしているかはわからないが,絶対に損している.特に,学生である自分が言うのも変であるが,学生のように若くてその分野に入ったばかりの人は人一倍元気に発表すべきだ.おとなしい発表より,少しぐらいハプニングが起きた発表ぐらいのほうが印象に残る.名前と自分の研究を売りたいなら,もっと熱くなって発表すべきだ.私もまだ未熟ではあるが,自分が熱の入っていない発表をしてしまった日は相当落ち込む.変わりたいという意識は常に持ってひとつひとつの機会を過ごしている.少なくとも,私は情熱のあるプレゼンターになるつもりだ.


4.練習練習練習

シンプルで情熱のあるプレゼンを本番でするにはどうしたら良いか?良いスライドができた.情熱もあるつもりだ.じゃぁ,本番は大丈夫だろう.そんなことはあるわけない.練習を最低10回はすべきだ.それも,

パソコンに向かってしゃべるのではなく,プロジェクターを使い,レーザーポインターを持って,立ち上がってするべき

だ.これはネイティブの先生に注意されたことで意識するようになった.私が「レーザーポインターないけど,ボールペンでいいよ」と冗談半分で言うと,彼は「絶対ダメだ.あの部屋で借りれるから借りてきなさい」というのだ.初めは細かいなーと思ったが,その通りだ.本番を想定していない練習は意味が殆ど無い.その後,彼の前で練習したのだが,人が目の前にいるだけですべて忘れる.レーザーポインターはやたら使うので見苦しい.挙句の果てには時間を3分も超過.内容と言うよりはむしろ,練習の仕方に問題があった.基本的に原稿を見て,パソコンに向かって練習していた.本番になると景色が変わった.そのせいで,原稿の読み間違えが多発.そのたびにパニック.これが本番だったらと思うとほんとうに恐ろしい.その後からは原稿はやめて,キーワードのみを見れるようにして,本番のような環境で10回以上練習している.

「本番を想定していない練習」は練習にはカウントしないほうがよさそうである.



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プレゼンについて本気で考えている日本人は少ないのだろうか?少なくとも良いプレゼンをしている人が多くはいない.一度,みんなで話し合う機会を設けてみるのがいいだろう.ゼミでも開こう.自分の勉強のためにも.



多くのことを考えて作った今回のプレゼン.初めての国際学会ではあるが,楽しく発表できたらと願っている.この願いは「4日後に達成されるはずだ」と信じている.

2 件のコメント:

  1. 個人的で具体的な実例がとてもわかり易く共感しました。この記事自体がとても良いプレゼンになっていると思ったよ。研究発表でも、何故この問題を気にしているのか、辺りで個人的な経緯みたいのが滲み出ていたりすると、聞く方も共感しやすいんじゃないかとこの記事を読んで気付きました。本番が楽しみなほど練習してるのは、アーティストがライブ楽しみ!ってよく言ってるのに似ていて、とても羨ましい気持ちになります。あー、俺も次の曲書いてまた歌いたい!って思わされます。

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  2. >もてさくさん
    コメントありがとうございます.共感が持てると言ってもらえて嬉しいです.他の多くの人にも共感が持てるといってもらえました.こういう「共感」をプレゼンにうまく取り込めたら「オーディエンスとのコネクション」が深まりそうですね.さて,いろいろなことを考えてきて,いよいよライブが近づいてきました.頑張ってきます.

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