2011年12月29日木曜日

長いプレゼン,式のプレゼンの苦悩

第13回地球流体力学研究集会(12月14日~15日)で発表した.

「熱帯での積雲対流に関連した大規模運動におけるNontraditional Coriolis項の重要性について」
写真
*再現動画.再現では持ち時間を超過してしまった...
*Google+の動画の埋め込み方がわからない...リンクへ.


発表時間は質疑あわせて25分,
聴衆はおそらく「力学屋」.

これまでの発表とは,以下の2点で状況が異なる:

  1. 長い発表だと,メッセージを伝えるだけでは物足りないかも.
  2. 力学屋は式に反応するだろうから,式を多めにしたほうがいいかも.


まず1つ目に関してだが,これまでの多くの発表は発表時間10分前後と大変短かった.したがって,注意してきた点はただひとつ:

「Advertise」としてメッセージを強調し,相手の興味を惹くこと.

相手の興味を惹けば,質疑,さらには発表後の休憩時間,懇親会などで議論は弾む.だから,自分の研究を宣伝しさえすれば,プレゼントしては成功だ.しかし,それが20分程度になると話は違うかもしれない.一つのメッセージを突き通すのではなく,その結論にたどり着いた理由を幾分詳細に語らなくてはならない.だが,逆に考えれば20分「しかない」のだから,全てを語る「Full Story」とする訳にはいかない.ということで,

どこまで付け加えて話すか?

―それが今回最も悩んだ点である.

最近はプレゼンはアナログに作るようにしていて,「紙」と向かい合うところから始めた.ストーリーを作っていき,流れは完成した.そこでPCを開いてスライド作りに取り掛かった.当然,ひとスライド,ひとメッセージというルールは変わらない.そして発表二日前に数人の人に集まっていただき,発表練習を行った.…みんなの顔が次第に歪んでいく.特に,今回意識した「式」による説明の部分だったと思う.そして質疑に入ると,先生から一言:

「今の流れでは,僕ですらついていけないよ.」

いつの間にか,ものすごく難しい内容を20分という短時間に押し込んでいた.時間をかければわかるかもしれないが…といった内容である.何が悪かったか考えてみた.原因はきっと,

「力学屋」ならわかるだろう

という根拠のない,焦点となる聴衆の決め方だった.発表の流れで不要な部分を削り,やはり「メッセージを限りなく強調」する必要があった.どこが不要だと思うか練習の際に先輩に指摘を頂いたので,それを参考に式による説明を半分未満にした.その分,メッセージは強調できるように,余裕のある流れに変えた.

結局,伝えたいメッセージは発表時間が長くても短くても変わらない.だから,時間が増えたからといって,多くを付け足してはならない.ましてや,それが難しい内容であっては聴衆は嫌な思いをするだけだ.出来る限り「簡潔」にまとめ,聴衆に難しいと思わせない内容にまとめるよう,心がけなくてはならない.




ここで,2つ目の困難と直面することになる.通常,スライドには「ひとつの図表」のみに留め,それを利用して発表者がプレゼンする.しかし,それが

図表ではなく「式」である場合にはどうあるべきか.

この答えはまだ見つかっていない.非常に悩ましい問題だ.式が有名なものであれば皆納得してくれる.しかし,研究においては式はオリジナルであり,だれも知らないことが普通である.それをいかに簡単に伝えれるかは,一生の課題としてまとわりついてきそうなほどだ.一応,どの式からどの式が出てきて,その式から何を言いたいのかは,

矢印や一言を書き加えることで対処したつもりだ.

しかし,なにか物足りない.臨場感にかけると言うか,興奮しにくいと言うか….とにかく,これでは不十分なのだ.そこで,知人に紹介された一つの動画を見て,一つのことに気づいた.

彼女は,

数学的な式を,物理的意味を持ったバランス関係として,

あたかも簡単なことを言っているように話している.これが重要なことなのではないだろうか?私自身の発表ではそこに意識はおいておらず,むしろ導出さえすれば,結論を言えばいいというほどに勘違いしていた.今後は彼女のように話せるよう努力したい.その前に,自分が用いている式を正確に,物理的バランスとして解釈するところからはじめなければ.



今回の発表を通じて考えたことの結論:

  1. 長い発表でも,メッセージを伝える重要性に変わりはない.
  2. 力学屋が好きな式でも,数式を物理的バランス関係として説明する.


次の発表は学内になる.今から楽しみになってきた.

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