国際学会での初発表.色々考えて臨んだ分,今の気持ちとしては「悔しい部分」が多い気がする.当然良かった点・悪かった点はそれぞれある.冷めないうちに,少し整理しておこう.
【良かった点】
1.最低限のコンテンツ
「Full storyではなく,10分程度のプレゼンはAdvertiseだ.」という気持ちで,内容はいつもと異なりひたすら削った.削るといっても学会発表なので,
「どこまで削っていいのか」
という難しい問題がつきまとう.シンプルにしすぎて問題設定が伝わらないのでは?そもそもの研究動機は理解してもらえるのか?信用してもらえるのか?いろんなことが頭をよぎる.しかし,全てを伝えるには12分は短すぎる.このことを信じてイントロは当初の半分,ディスカッションも半分程度に留めた.
「この選択はかなり怖かったが,必要不可欠だった.」
ということには修正して何度も練習して,本番を終えた今ならよく理解できる.他の人の発表を聞いていてわかった.それらを加えてしまっていては,オーディエンスに覚えて家に帰ってもらいたいポイントを覚えにくくしてしまう.その理由は3つある.まず,発表時間に余裕がなくなり,早口になり,全体が薄くなる.また,オーディエンスがひとつの発表を聞いて覚えて帰れることなど限られている.さらに,スライドを混雑させる原因となり,見難くなる.多くを知ってもらいたいがために失敗してしまうのだと思うが,「必要最低限」以上のものを含めることは避けるべきだろう.学会発表だと当然自分の結果を全部見て欲しくなる.頑張ったなら当然そうなる.でも,そこで取捨選択して公表する勇気を持たなくてはならない.
最近興味深い言葉を聞いた.
「論文は記録を残すために書く.学会発表は記憶に残すために行う.」
細かいことを言いたければ論文にして発表すればいい.学会は覚えて帰ってもらうためにある.学会はAdvertiseであるべきなのだ.覚えてもらえば,プレゼンの後で気になる人は聞きに来る.そこで議論すればひとりの「ファン」に詳細を理解してもらえ,こちらとしても有益な情報を得ることができる.今回の発表がそうであったように.
2.最低限のスライド
最も変えたのはここだ.「読むことはなるべく書かない.強調する場合は書く.」そう決めてスライドをかなり修正してきた.これまで(少なくとも春ごろ)のスライドは箇条書きを利用し,相手にとって「わかりやすい」ようにまとめていた.大事なところは聞き逃したくないだろうから,まとめて書いておこうという,オーディエンスのことを「考慮して」作っていた.この「わかりやすい」「考慮して」は間違いだった.逆にわかりにくいスライドを作り上げていたのだ.
その間違いは,箇条書きを駆使したプレゼンを多く見ることではっきりと理解できた.今日のいくらかのプレゼンを見たが,
「そんなに文字書いちゃ,どこ見ればいいかわからない」
というのが素直な感想だった.本か,掲示するため「だけ」に作られたポスターでも意識して作ったのだろうか.しかも,それを全部丁寧に読むのだ.時間を過ぎているのにもかかわらず.最近プレゼンを学び始めて発表を見る目が少し変になっているのもあるかもしれないが,箇条書きで三ページにわたる「Conclusions」を見かけたときには自分が正しいと確信できた.何を強調するかを決めているなら,それが目立つスライドでプレゼンを終えるべきだ.
そもそも,ひとつのスライドにはポイントひとつだけを持たせて作るのが良い.それを意識することで,自身のスライドは良くなったと思っている.
ポイントが思いつかないスライドは消す.
二つのポイントがあればふたつのスライドに分ける.
ふたつにスライドを分けるのは,結構躊躇した.でも,どうせ説明する内容ならば,スライドを増やすからといっても発表時間の負担にはならないだろう.さらに,必要ない文字は消す.読みたくないが必要な情報があれば,オーディエンスが読める分量まで書く.強調したいところは視覚的に印象に残りやすい図表を用いる.もしこれらの中で意識していない点があれば,すぐに意識したほうがいいと思う.オーディエンスを思いやるなら.
3.最大限のコネクション
会場とつながることは大切だ.つながって初めて,研究をより理解してもらえると思う.そのために気をつけた点は3つある.まず,発表の前にオーディエンスを惹きつけることだ.要するにつかみのギャグを言うのだ.雰囲気にあったものを選択するのは至難な技かもしれないが,成功すればオーディエンスは皆,プレゼンター本人を見る.これは非常に大事だ.プレゼン中にプレゼンターは何度見られるだろうか?多くの場合,スライドばかりに気を取られて,スライドの脇の真っ暗な空間に立って喋っている人には注目しないだろう.それに慣れてしまったのか,プレゼンターまでスライドに「話しかけている」.(当然本来あるべき姿ではないが,)そのような状況の中,
はじめと終わりはスライドが邪魔しないので,プレゼンターは見てもらえる可能性が高い.
そこで一言いうだけでいいのだ.「アンニョンハセヨー.チョヌン,ハヤシミチヤ イムニダー」と.これは状況に合っていたようで,挨拶の時点で多くの人が笑い,自己紹介した後には拍手が起きた.一部の人はこういう行為をしたくないと思うだろう.しかし,これで初めて会うオーディエンスとつながれると思えばチャレンジする価値はあるだろう.私は,暖かい空気に包まれ,プレゼンを開始できた.プレゼン開始以降のオーディエンスは時々,私自身の方を見てくれた.
次に,簡単なことだが,レーザーポインターをスライド側の手で持つことである.こうすることで自然と体はオーディエンスの方を向く.先にも触れたが,スライドに「話しかける」のはやめたほうがいい.オーディエンスに話しかけなければプレゼンの意味はない.これについては,練習した.今まで意識していなかったことなので,変えようと思い,毎日プロジェクターをセットしてレーザーポインターを持って発表した.本番は目の前に人がたくさんいるが,この練習のおかげでそれほど強張ることなく話せた.今まではスライドと話す練習をしていたのだから,本番になって人を見て焦るのも当然だったのかもしれない.
最後に,笑顔を忘れないことである.発表中は真剣に話すが,はじめと終わりは笑顔で過ごせた.プレゼンを終わるときに笑っていると,意外とあとで顔を覚えているから不思議である.
4.練習練習練習
とにかく練習した.毎日,録音しながら,本番と同じセッティングで.今回は国際学会だったので,英語への不安のせいもあって今までにないほど練習した.練習を進めていくと,次第にその練習の質が変わっていったことに気づいた.
初めのうちは,「原稿」をスラスラ読んで,ある程度発音も悪くはないだろうと自画自賛して終えていた.この練習の質の悪さには,ネイティブの先生の前に立って練習したときに明らかになった.焦ったら何もわからなくなる.感情がこもらない.最終的に時間以内にも終わらない.このままではダメだということは容易に分かった.指導を受けた後は,スライド等は訂正し,「キーワード」で練習するように心がけた.これは「伝えたい事は何か」を考えることにもつながるが,結果として感情をこめた,Emotionalな発表への一歩だと思った.これだけは言わなければならないと思うと,そのセンテンスには熱が入る.熱が入ると,読み方に緩急が必要だと考え始めて,いろいろ試してみたくなる.
この頃にはもう体が言いたいことを覚えている.
色々考えて練習していると,原稿を読むこと無く,スラスラと喋れるようになってしまう.さらに,多少本番で間違えても,融通が効くようになっている.国際学会だからと言い訳して原稿に頼るよりも,本気で練習して体で覚えたほうが得だ.
また,この練習した分だけ,本番を終えた今では反省点も多く上がっているように思う.これも良い点の一つと考えることにして,悪い点に進もう.
【悪かった点】
1.トラブルは付きもの
スライドの一部が消えるというトラブルにあった.悪いことに,「最も重要だ」と言い放って見せたTableの多くの部分が消えたのである.焦って何もできなかった.一言謝って,なんとか補うように強調して説明した.その場はそれで乗り越えたが,後から考えると,
一言「ユーモア」を付け足して次に進めばよかった
と思う.予定外のことが起きてパニックだが,その時に落ち着いて「文字はどこかへ逃げてしましましたが,大丈夫.私の言葉を注意深く聞いてください」とか一言付け足せば良かった.オーディエンスはトラブルが生じたことくらい気づくだろうし,心配してくれる人もいるかもしれない.「ユーモア」をひとつかませることで,オーディエンスの不安を取り除き,自分を落ち着かせることができたかもしれない.トラブルは付き物だから,せめて緩和できるようになりたい.
2.意外と短調
録音を聞いた.自分では抑揚を付けて喋っていたつもりだが,意外と短調だ.しかも,やや早口になっている.緊張したせいで,力が入って,弱くすべきところを弱くできていなかったのだと思う.また,鼓動が早くなるのに合わせて,体内時計も早く回っていたようだ.もともと緊張しやすいので,今後なにか対策を考えたいものである.練習だけでは防げないのかもしれない.ただ,
「場数」という言葉で済ませたくはない.
出来る限り早く克服していきたいものである.
3.質問理解力
勉強不足と言うのかもしれない.質問の意図を理解するのにやや時間がかかりすぎた.すぐ答えていればもう一人くらいから質問をいただけたかもしれない.鍛え方はよくわからないが,物事を落ち着いて,頭の中で早く整理するよう日頃から心がけよう.勉強も広くしておく必要があると再確認した.
他,細かいこともあるが,これ以上はここには記さない.多く書きすぎるのは良くない.
さて,韓国の国際学会を終えた今,いろんな反省点が上がってきた.次回も,今回のように考えたプレゼンになるよう努力する.自分は研究をして,伝える研究者になりたい.
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明日からはオーディエンスとしての参加.積極的になって,交流もしなければ!
2011年10月25日火曜日
2011年10月20日木曜日
印象に残すこと
知人の影響や学会発表のプレゼン準備などで,最近はプレゼンの仕方に興味を持っている.勉強するにあたって利用している(する予定である)モノと,意識するようになった点を以下にまとめておこう.
【ベンキョウ道具】
1.「シンプルプレゼンのテクニック90分」 (ガー・レイノルズ)
このムービーは何度か見たが,何度見ても勉強になる.
まずはプレゼンの組み立て方だ.これまでは,まず「パワポ」を開き,ざっくりな流れをスライドとして作り,それを詳細にまとめていた.ガーはこう言っている.
「Plan "analog"」
計画はアナログに立てるものなのだ.方法は付箋でもいいしノートでもいい.壁でもいい.とにかく,パソコンを閉じてペンで書きだすのが最もクリエイティブな流れを生み出す.実際にやってみると,思いつくままに絵を描いて言葉を書き,いいストーリーが出来てきた.パソコンで作ると思いがちだが,ぜひそんなことはやめてアナログに作ろう.
このムービーの真髄は「シンプルなプレゼン」作りだろう.そもそも「シンプル」というのは
「Simplicity」
であり,「Simplistic」ではない.つまり,自分の都合に合わせて簡単化するのではなく,相手の立場になって簡単にするのである.プレゼンの本位はオーディエンスにある.したがって,相手が容易に理解し共感できるプレゼンを目指す必要がある.そのためには相手を知らなければならない.相手が何を求めていて,何が気になって「夜も眠れない」状況に落ちいているかを考える.すると,自ずと強調すべき点が見えてくる.
また,プレゼンに「Emotion」が必要であることもよく伝わってきた.これは前から意識して発表しているつもりであるが,意外と難しい.後で録音を聴くとそこには感情は現れていないのがいつものことである.しかし,重要であることは改めて実感したので,今後こそ,ソコを目指して精進したい.笑顔も忘れないことが大切である.これはオーディエンスとのコネクションを作ることにもつながってくるだろう.
他にもたくさん学んだが,興味のある人は「何とかして」このムービーを手にして見て欲しい.絶対に変わる.
2.TED.com
このWEBサイトも非常に充実していて面白い.多くのプレゼンが日々更新されている.様々な分野に整理されており,モノによっては日本語字幕が付く(笑).20分程度で時間を選ばないし,内容も混乱するほど難しくはない.それでいて,多くのプレゼンがシンプルかつ感情的だ.
Paul Bloom: The origin of pleasure
http://www.ted.com/talks/paul_bloom_the_origins_of_pleasure.html
ジョークが非常に多いが,メッセージ性は強く,シンプルでわかりやすい.終わった後にもう一度見返した.
このような,そそられるプレゼンが無限大にある.見たことない人は必ずチェックすべきだと思う.
3.スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼン人々を惹きつける18の法則
これは言わずもがなであろう.私がジョブズに興味を持ったのはここ1ヶ月以内だと思う.その矢先に彼が亡くなったのは,ショックだった.だが,これが残した遺産は多くあるので,これらからたくさん吸収する事はできる.彼が亡くなった日には彼のプレゼンを5つくらい連続で見た.これからもずっと勉強させて頂きます.
この本は正確にはまだ読んでいない.一部抜粋で「読んだ」.プレゼンの練習・準備に関することだが,これは大変参考になる.キーワードを残して練習し,キーワードのみでプレゼンできるようにする.また,ひとつのスライドにはひとつの図表がスライドにあるはずだから,それを強調する.その写真だけでもいい.
これからの愛読書になることは間違いない.
【意識の変化】
1.10分のプレゼンはadvertise.
これはネイティブの先生にプレゼンを見てもらったときに得た言葉である.私のプレゼンは時間をオーバーしてしまった.しかも早口の英語で.終わった後に,ひたすら「君の発表内容とスライドはBusyすぎる」と言われた.スライドには文字が多い.伝えたい事が多すぎる.そこで,先生はこう教えてくれた.
「10min advertise. 40min full story.」
10分しかないのにフルストーリーを詳細に話そうとしていたのだ.これではBusyになるのは当たり前だ.しかし,「すべてを伝えるのが学会では一番望ましい」と私がずっと考えていたのも事実である.どんな質問が来るかわからないし,実験設定がわからなかったら発表の意味もない.とにかく情報を詰め込んで,「全部伝わる」スライドを作ろうとしていた.これが間違いだ.「宣伝」するつもりで作らないとそんな短い時間では何も伝わらない.このことを聞いて発表に対する考えが変わった気がする.
「全部伝える」→「ひとつ覚えて帰ってもらう」
強調すべき点はどこかひたすら考え,それを伝えるためにスライドからいらないものを省いた.これが相手に伝わるかどうかは4日後に韓国でわかるのだが,印象に残るプレゼンで有って欲しい.
2.文字は誰でも読める.
これもネイティブの先生に言われたことに関連する.スライドに多くの話す内容を書いている場合が多いが,それらを平気でしゃべる.オーディエンスとしては聞けばわかるし,読んでもわかるのだ.両方ある必要はないのだ.だから,スライドには読まない内容を書く.当然多く書かないほうがいい.強調したい場合や難しい内容であれば書く必要はある.ただ,
「読むためのスライド」ではダメ
ということだ.スライドに載せる図表は相手のイメージに残る.文字よりも絵がインパクトはある.そこに,じゃまをするようにダラダラ箇条書きに文字を羅列していてはもったいない.そんなスライドはやめて,インパクトを与えるためのスライド作りを心がけるようになった.そのためには,
「マイクロソフトのテンプレートは使わず,まっさらなスライドから作り始める」
ことが有用であろう.ビル・ゲイツは頭もよく,出来る人であるが,かつてプレゼンが下手だった.それは皮肉にも「テンプレート」のせいだったと思われる.彼はその後,素晴らしいプレゼンターへと変わった.だが,そこには「テンプレート」はなく,大きくシンプルな図表がひとつあり,その前に立って話している.
箇条書きやダサいタイトルはやめて,図表ひとつで勝負できるようになりたい.
3.情熱を.
少し上でも触れたが,情熱がない発表ほどつまらないものはない.プレゼンターはスライドと会話するように発表し,オーディエンスの半分は寝る.終わったあとで「良い発表だったね」と賞賛する.全く無意味である.そうならないためには,相手に興味を持って発表する必要がある.相手が何を知りたくてこの場にいるのか?自分は相手にどうなって欲しいのか?そういったことをまず考えよう.それがわかれば,相手に伝えたい事もスッキリまとまってくる.そうなれば,相手に伝えるために
「情熱」をもって発表しなければという衝動にかられる
のではないだろうか.そうなれば,声に抑揚が出てきて,相手の表情にも気を配るようになり,さらには自分自身が楽しくなってくると思う.
また,学会などで度々元気のない発表を「平気で」する学生がいる.本人達が平気でしているかはわからないが,絶対に損している.特に,学生である自分が言うのも変であるが,学生のように若くてその分野に入ったばかりの人は人一倍元気に発表すべきだ.おとなしい発表より,少しぐらいハプニングが起きた発表ぐらいのほうが印象に残る.名前と自分の研究を売りたいなら,もっと熱くなって発表すべきだ.私もまだ未熟ではあるが,自分が熱の入っていない発表をしてしまった日は相当落ち込む.変わりたいという意識は常に持ってひとつひとつの機会を過ごしている.少なくとも,私は情熱のあるプレゼンターになるつもりだ.
4.練習練習練習
シンプルで情熱のあるプレゼンを本番でするにはどうしたら良いか?良いスライドができた.情熱もあるつもりだ.じゃぁ,本番は大丈夫だろう.そんなことはあるわけない.練習を最低10回はすべきだ.それも,
パソコンに向かってしゃべるのではなく,プロジェクターを使い,レーザーポインターを持って,立ち上がってするべき
だ.これはネイティブの先生に注意されたことで意識するようになった.私が「レーザーポインターないけど,ボールペンでいいよ」と冗談半分で言うと,彼は「絶対ダメだ.あの部屋で借りれるから借りてきなさい」というのだ.初めは細かいなーと思ったが,その通りだ.本番を想定していない練習は意味が殆ど無い.その後,彼の前で練習したのだが,人が目の前にいるだけですべて忘れる.レーザーポインターはやたら使うので見苦しい.挙句の果てには時間を3分も超過.内容と言うよりはむしろ,練習の仕方に問題があった.基本的に原稿を見て,パソコンに向かって練習していた.本番になると景色が変わった.そのせいで,原稿の読み間違えが多発.そのたびにパニック.これが本番だったらと思うとほんとうに恐ろしい.その後からは原稿はやめて,キーワードのみを見れるようにして,本番のような環境で10回以上練習している.
「本番を想定していない練習」は練習にはカウントしないほうがよさそうである.
--
プレゼンについて本気で考えている日本人は少ないのだろうか?少なくとも良いプレゼンをしている人が多くはいない.一度,みんなで話し合う機会を設けてみるのがいいだろう.ゼミでも開こう.自分の勉強のためにも.
多くのことを考えて作った今回のプレゼン.初めての国際学会ではあるが,楽しく発表できたらと願っている.この願いは「4日後に達成されるはずだ」と信じている.
【ベンキョウ道具】
1.「シンプルプレゼンのテクニック90分」 (ガー・レイノルズ)
このムービーは何度か見たが,何度見ても勉強になる.
まずはプレゼンの組み立て方だ.これまでは,まず「パワポ」を開き,ざっくりな流れをスライドとして作り,それを詳細にまとめていた.ガーはこう言っている.
「Plan "analog"」
計画はアナログに立てるものなのだ.方法は付箋でもいいしノートでもいい.壁でもいい.とにかく,パソコンを閉じてペンで書きだすのが最もクリエイティブな流れを生み出す.実際にやってみると,思いつくままに絵を描いて言葉を書き,いいストーリーが出来てきた.パソコンで作ると思いがちだが,ぜひそんなことはやめてアナログに作ろう.
このムービーの真髄は「シンプルなプレゼン」作りだろう.そもそも「シンプル」というのは
「Simplicity」
であり,「Simplistic」ではない.つまり,自分の都合に合わせて簡単化するのではなく,相手の立場になって簡単にするのである.プレゼンの本位はオーディエンスにある.したがって,相手が容易に理解し共感できるプレゼンを目指す必要がある.そのためには相手を知らなければならない.相手が何を求めていて,何が気になって「夜も眠れない」状況に落ちいているかを考える.すると,自ずと強調すべき点が見えてくる.
また,プレゼンに「Emotion」が必要であることもよく伝わってきた.これは前から意識して発表しているつもりであるが,意外と難しい.後で録音を聴くとそこには感情は現れていないのがいつものことである.しかし,重要であることは改めて実感したので,今後こそ,ソコを目指して精進したい.笑顔も忘れないことが大切である.これはオーディエンスとのコネクションを作ることにもつながってくるだろう.
他にもたくさん学んだが,興味のある人は「何とかして」このムービーを手にして見て欲しい.絶対に変わる.
2.TED.com
このWEBサイトも非常に充実していて面白い.多くのプレゼンが日々更新されている.様々な分野に整理されており,モノによっては日本語字幕が付く(笑).20分程度で時間を選ばないし,内容も混乱するほど難しくはない.それでいて,多くのプレゼンがシンプルかつ感情的だ.
Paul Bloom: The origin of pleasure
http://www.ted.com/talks/paul_bloom_the_origins_of_pleasure.html
ジョークが非常に多いが,メッセージ性は強く,シンプルでわかりやすい.終わった後にもう一度見返した.
このような,そそられるプレゼンが無限大にある.見たことない人は必ずチェックすべきだと思う.
3.スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼン人々を惹きつける18の法則
これは言わずもがなであろう.私がジョブズに興味を持ったのはここ1ヶ月以内だと思う.その矢先に彼が亡くなったのは,ショックだった.だが,これが残した遺産は多くあるので,これらからたくさん吸収する事はできる.彼が亡くなった日には彼のプレゼンを5つくらい連続で見た.これからもずっと勉強させて頂きます.
この本は正確にはまだ読んでいない.一部抜粋で「読んだ」.プレゼンの練習・準備に関することだが,これは大変参考になる.キーワードを残して練習し,キーワードのみでプレゼンできるようにする.また,ひとつのスライドにはひとつの図表がスライドにあるはずだから,それを強調する.その写真だけでもいい.
これからの愛読書になることは間違いない.
【意識の変化】
1.10分のプレゼンはadvertise.
これはネイティブの先生にプレゼンを見てもらったときに得た言葉である.私のプレゼンは時間をオーバーしてしまった.しかも早口の英語で.終わった後に,ひたすら「君の発表内容とスライドはBusyすぎる」と言われた.スライドには文字が多い.伝えたい事が多すぎる.そこで,先生はこう教えてくれた.
「10min advertise. 40min full story.」
10分しかないのにフルストーリーを詳細に話そうとしていたのだ.これではBusyになるのは当たり前だ.しかし,「すべてを伝えるのが学会では一番望ましい」と私がずっと考えていたのも事実である.どんな質問が来るかわからないし,実験設定がわからなかったら発表の意味もない.とにかく情報を詰め込んで,「全部伝わる」スライドを作ろうとしていた.これが間違いだ.「宣伝」するつもりで作らないとそんな短い時間では何も伝わらない.このことを聞いて発表に対する考えが変わった気がする.
「全部伝える」→「ひとつ覚えて帰ってもらう」
強調すべき点はどこかひたすら考え,それを伝えるためにスライドからいらないものを省いた.これが相手に伝わるかどうかは4日後に韓国でわかるのだが,印象に残るプレゼンで有って欲しい.
2.文字は誰でも読める.
これもネイティブの先生に言われたことに関連する.スライドに多くの話す内容を書いている場合が多いが,それらを平気でしゃべる.オーディエンスとしては聞けばわかるし,読んでもわかるのだ.両方ある必要はないのだ.だから,スライドには読まない内容を書く.当然多く書かないほうがいい.強調したい場合や難しい内容であれば書く必要はある.ただ,
「読むためのスライド」ではダメ
ということだ.スライドに載せる図表は相手のイメージに残る.文字よりも絵がインパクトはある.そこに,じゃまをするようにダラダラ箇条書きに文字を羅列していてはもったいない.そんなスライドはやめて,インパクトを与えるためのスライド作りを心がけるようになった.そのためには,
「マイクロソフトのテンプレートは使わず,まっさらなスライドから作り始める」
ことが有用であろう.ビル・ゲイツは頭もよく,出来る人であるが,かつてプレゼンが下手だった.それは皮肉にも「テンプレート」のせいだったと思われる.彼はその後,素晴らしいプレゼンターへと変わった.だが,そこには「テンプレート」はなく,大きくシンプルな図表がひとつあり,その前に立って話している.
箇条書きやダサいタイトルはやめて,図表ひとつで勝負できるようになりたい.
3.情熱を.
少し上でも触れたが,情熱がない発表ほどつまらないものはない.プレゼンターはスライドと会話するように発表し,オーディエンスの半分は寝る.終わったあとで「良い発表だったね」と賞賛する.全く無意味である.そうならないためには,相手に興味を持って発表する必要がある.相手が何を知りたくてこの場にいるのか?自分は相手にどうなって欲しいのか?そういったことをまず考えよう.それがわかれば,相手に伝えたい事もスッキリまとまってくる.そうなれば,相手に伝えるために
「情熱」をもって発表しなければという衝動にかられる
のではないだろうか.そうなれば,声に抑揚が出てきて,相手の表情にも気を配るようになり,さらには自分自身が楽しくなってくると思う.
また,学会などで度々元気のない発表を「平気で」する学生がいる.本人達が平気でしているかはわからないが,絶対に損している.特に,学生である自分が言うのも変であるが,学生のように若くてその分野に入ったばかりの人は人一倍元気に発表すべきだ.おとなしい発表より,少しぐらいハプニングが起きた発表ぐらいのほうが印象に残る.名前と自分の研究を売りたいなら,もっと熱くなって発表すべきだ.私もまだ未熟ではあるが,自分が熱の入っていない発表をしてしまった日は相当落ち込む.変わりたいという意識は常に持ってひとつひとつの機会を過ごしている.少なくとも,私は情熱のあるプレゼンターになるつもりだ.
4.練習練習練習
シンプルで情熱のあるプレゼンを本番でするにはどうしたら良いか?良いスライドができた.情熱もあるつもりだ.じゃぁ,本番は大丈夫だろう.そんなことはあるわけない.練習を最低10回はすべきだ.それも,
パソコンに向かってしゃべるのではなく,プロジェクターを使い,レーザーポインターを持って,立ち上がってするべき
だ.これはネイティブの先生に注意されたことで意識するようになった.私が「レーザーポインターないけど,ボールペンでいいよ」と冗談半分で言うと,彼は「絶対ダメだ.あの部屋で借りれるから借りてきなさい」というのだ.初めは細かいなーと思ったが,その通りだ.本番を想定していない練習は意味が殆ど無い.その後,彼の前で練習したのだが,人が目の前にいるだけですべて忘れる.レーザーポインターはやたら使うので見苦しい.挙句の果てには時間を3分も超過.内容と言うよりはむしろ,練習の仕方に問題があった.基本的に原稿を見て,パソコンに向かって練習していた.本番になると景色が変わった.そのせいで,原稿の読み間違えが多発.そのたびにパニック.これが本番だったらと思うとほんとうに恐ろしい.その後からは原稿はやめて,キーワードのみを見れるようにして,本番のような環境で10回以上練習している.
「本番を想定していない練習」は練習にはカウントしないほうがよさそうである.
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プレゼンについて本気で考えている日本人は少ないのだろうか?少なくとも良いプレゼンをしている人が多くはいない.一度,みんなで話し合う機会を設けてみるのがいいだろう.ゼミでも開こう.自分の勉強のためにも.
多くのことを考えて作った今回のプレゼン.初めての国際学会ではあるが,楽しく発表できたらと願っている.この願いは「4日後に達成されるはずだ」と信じている.
2011年9月21日水曜日
研究と出会い
最近はいろいろあった.いろいろあったが,何もまとめていなかった.たくさん旅行して,おもいっきり楽しんだ.オープンキャンパスの幹事を通して,人をまとめることが難しいことを再実感し,克服に向けて本「統率力。」サミュエル・B・バカラック著を買って読んだ.その他いろいろあった.なので,一度最近感じたことを二点の気象関連イベントをピックアップしてまとめておく.
9月4-6日 気象夏の学校2011@愛知
http://rain.hyarc.nagoya-u.ac.jp/ymss2011/
愛知県の東端の施設にて,気象夏の学校に参加しました.今年で二回目.
去年参加したときは学部生,今年は大学院生.研究もしているわけで,自然と目的は「友達作り→研究紹介」へとシフトしていた.
幸い,今年は口頭発表で申し込んでいたので,研究に関して多くの学生に話を聞いてもらえた.この春の気象学会でポスター発表したが,その時より多くの人が聞いているわけだから,研究を広めるにはもってこいの場所だと思った.
というわけなので,発表内容を「研究結果と考察」重視→「研究のモチベーションと"nontraditional" Coriolis項の意味」重視へと切り替えた.その結果,研究の結果に関する考察を十分話すことは出来なかったが,あまり有名ではない"nontraditional" Coriolis項という言葉を知ってもらうことができた.もっと効率よく話を進めれば自分の成果も最後まで話せたかもしれないが,知ってもらえたのが何より重要.今後の研究発表で,その項が何者なのか知っていて,興味を持って聞いていただけたならどれだけ嬉しいことか.発表がHPに保存されるらしいが,音声資料は正直恥ずかしい.もっと練習を繰り返して発表するべきだった.今後に活かすべき反省点である.
さらに研究を普及させるためにfacebookにそのページを作った.まだ発達前ではあるが,利用できるかぎり利用していきたい.また,発信することで自分の理解を確かめ,さらに議論することで深めることができるはずである.それを信じて,時間があるときに有意義なページへと進化させる.
http://www.facebook.com/pages/Studies-on-nontraditional-Coriolis-terms/245162775527331?sk=info
もともと研究室HPにも書いてあるので,これも充実させなくては.
http://weather.geo.kyushu-u.ac.jp/~m-hayashi/index.html
研究に関することだけが得られたものではない.今年から参加する同期が一気に増え,同じような考えを持つ人とも出会うことができた.これは今後の研究人生にずっと関わっていく出会いだと思っている.同期だけでなく,多くの先輩とも親しくなることができた.これからの気象イベントが一層楽しみになってきた.
9月6-7日 熱帯気象研究集会2011@京都
http://www-clim.kugi.kyoto-u.ac.jp/shige/tropical_met2011/
以前からずっと参加したいと思っていた研究集会.だが,夏の学校の疲れ(主に寝不足・二日酔い)が溜まっていたせいか,初日はあまり話が頭に入ってこなかった,というのが本当のところである.ポスターセッションでビールを飲んで少し回復したんではないかと錯覚を覚えるほどであった.小さなカプセルホテルで十分寝たので,二日目には復活した.そして,ポスター発表で申し込んでおくべきだったと後悔が始まるも,後の祭り.
学会の内容としては,非常に面白かった.熱帯に詳しい方々が熱心に議論する光景だけでも,私にとっては重要なものであった.何が今の熱帯では盛んに研究されているのか?何が熱帯気象の「常識」なのか?"nontraditional" Coriolis項に注目している研究者はいるのか?色々考えながら見ていた.
全体的にレーダーの話や降水の話が多かっただろうか.大規模運動や成層圏の話もあったが,学会が終わった後は,レーダーによる観測データってどんなに使えるのか?ということを一番考えていたかもしれない.研究室で使っている人がいないので,利用方法が見つかったら積極的に取り入れたいと思う.
また,ここでも人との出会いが嬉しかった.今までは熱帯を専門とする先生と知り合う機会は少なかった.学生と積極的に交流してくださる方々を除いては話すきっかけがなかなか無かった.今回は全員熱帯のプロ.昼ごはんを食べながら話せたし,ビール飲みながら話せたし,これらすべて私にとっては良い経験であり,良い出会いだ.
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最近思うことといえば,研究に関することは重要なのは当然だが,
人との出会いに感動することが多いということ.
様々な場で積極的に出会い,それぞれのつながりを大切にしていければいいな.
それはそうとして,早く論文書き上げて次の課題にとりかからなければとの焦りが私の心の大部分を占めているのは事実.完成させて,つぎのステップへ.これから韓国での学会があるし,コロキウム発表もあるし,できればAMS主催の学会にも申し込みたいし,とにかく時間はない.なんでも集中してがんばろう.
9月4-6日 気象夏の学校2011@愛知
http://rain.hyarc.nagoya-u.ac.jp/ymss2011/
愛知県の東端の施設にて,気象夏の学校に参加しました.今年で二回目.
去年参加したときは学部生,今年は大学院生.研究もしているわけで,自然と目的は「友達作り→研究紹介」へとシフトしていた.
幸い,今年は口頭発表で申し込んでいたので,研究に関して多くの学生に話を聞いてもらえた.この春の気象学会でポスター発表したが,その時より多くの人が聞いているわけだから,研究を広めるにはもってこいの場所だと思った.
というわけなので,発表内容を「研究結果と考察」重視→「研究のモチベーションと"nontraditional" Coriolis項の意味」重視へと切り替えた.その結果,研究の結果に関する考察を十分話すことは出来なかったが,あまり有名ではない"nontraditional" Coriolis項という言葉を知ってもらうことができた.もっと効率よく話を進めれば自分の成果も最後まで話せたかもしれないが,知ってもらえたのが何より重要.今後の研究発表で,その項が何者なのか知っていて,興味を持って聞いていただけたならどれだけ嬉しいことか.発表がHPに保存されるらしいが,音声資料は正直恥ずかしい.もっと練習を繰り返して発表するべきだった.今後に活かすべき反省点である.
さらに研究を普及させるためにfacebookにそのページを作った.まだ発達前ではあるが,利用できるかぎり利用していきたい.また,発信することで自分の理解を確かめ,さらに議論することで深めることができるはずである.それを信じて,時間があるときに有意義なページへと進化させる.
http://www.facebook.com/pages/Studies-on-nontraditional-Coriolis-terms/245162775527331?sk=info
もともと研究室HPにも書いてあるので,これも充実させなくては.
http://weather.geo.kyushu-u.ac.jp/~m-hayashi/index.html
研究に関することだけが得られたものではない.今年から参加する同期が一気に増え,同じような考えを持つ人とも出会うことができた.これは今後の研究人生にずっと関わっていく出会いだと思っている.同期だけでなく,多くの先輩とも親しくなることができた.これからの気象イベントが一層楽しみになってきた.
9月6-7日 熱帯気象研究集会2011@京都
http://www-clim.kugi.kyoto-u.ac.jp/shige/tropical_met2011/
以前からずっと参加したいと思っていた研究集会.だが,夏の学校の疲れ(主に寝不足・二日酔い)が溜まっていたせいか,初日はあまり話が頭に入ってこなかった,というのが本当のところである.ポスターセッションでビールを飲んで少し回復したんではないかと錯覚を覚えるほどであった.小さなカプセルホテルで十分寝たので,二日目には復活した.そして,ポスター発表で申し込んでおくべきだったと後悔が始まるも,後の祭り.
学会の内容としては,非常に面白かった.熱帯に詳しい方々が熱心に議論する光景だけでも,私にとっては重要なものであった.何が今の熱帯では盛んに研究されているのか?何が熱帯気象の「常識」なのか?"nontraditional" Coriolis項に注目している研究者はいるのか?色々考えながら見ていた.
全体的にレーダーの話や降水の話が多かっただろうか.大規模運動や成層圏の話もあったが,学会が終わった後は,レーダーによる観測データってどんなに使えるのか?ということを一番考えていたかもしれない.研究室で使っている人がいないので,利用方法が見つかったら積極的に取り入れたいと思う.
また,ここでも人との出会いが嬉しかった.今までは熱帯を専門とする先生と知り合う機会は少なかった.学生と積極的に交流してくださる方々を除いては話すきっかけがなかなか無かった.今回は全員熱帯のプロ.昼ごはんを食べながら話せたし,ビール飲みながら話せたし,これらすべて私にとっては良い経験であり,良い出会いだ.
--
最近思うことといえば,研究に関することは重要なのは当然だが,
人との出会いに感動することが多いということ.
様々な場で積極的に出会い,それぞれのつながりを大切にしていければいいな.
それはそうとして,早く論文書き上げて次の課題にとりかからなければとの焦りが私の心の大部分を占めているのは事実.完成させて,つぎのステップへ.これから韓国での学会があるし,コロキウム発表もあるし,できればAMS主催の学会にも申し込みたいし,とにかく時間はない.なんでも集中してがんばろう.
2011年7月28日木曜日
Landu and Maloney 2011を読んでみたが,なんだかな
JMSJとパラ見していて見つけた論文,
Landu, K. and E. D. Maloney, 2011: Effect of SST Distribution and Radiative Feedbacks on the Simulation of Intraseasonal Variability in an Aquaplanet GCM., J. Meteor. Soc. Japan, 89, 195-210.
と,それに関連した論文
Maloney, E. D., A. H. Sobel and W. M. Hannah, 2010: Intraseasonal Variability in an Aquaplanet General Circulation Model., J. Adv. Model. Earth Syst., 2, Art. #5, 24 pp.
をひと通り読んだ.気になったのは,Maloney et al. (2010, hereafter M10)で,CAM3.1を用いてMadden-Julian Oscillation (hereafter MJO)の再現に成功したという雰囲気の文面があったから.
そもそもCAM3.1はプリミティブ方程式系を用いている.NICAMでMJOの再現に成功したのは非静力学モデルにして計算したからだと思い込んでいた私にとっては信じがたい論文であった.だからかなり疑いながら読むことにした.
Landu and Maloney 2011(hereafter LM11)はM10を元に拡張させた論文だったので,まずはM10を読んだ.この論文で新しいポイントとしては,
1.赤道付近を除き,南北SST勾配を現実的な値の四分の一にした.
という一点だろう.「なんで1/4??」という疑問は消えない.まぁ,感度実験なんてそんなもんだと言い聞かせて読み進める.
行った実験は3タイプ.与えるSSTを変えて,それによる応答を調べている.
1.現実的SST
2.帯状対称SST
3.1/4SST勾配
ざっくり結果の印象を述べるなら,
1.MJOっぽいのはできたが,降水の分散は赤道を挟んで2つのピークを持つ.帯状風は高周波をかなり含んでいる.降水については帯状波数が1~2より大きいところにもピークを持つ.
2.MJO的でない.
3.赤道より南に強い降水の分散ピークを持つ.東西風偏差も強いため,線形的なWISHEではないが,非線形なWISHEが東進を遅くするのに効いているかも.観測で見られる周波数にかなり近い.
といった感じか.要するに,
「1/4SST勾配の実験が最もよくMJOを再現できた.ただし,その強度が大きすぎるし,湿度偏差の傾いた鉛直構造は再現されていない.」
ここで,1/4SST勾配と言われても騙されているとしか思えない…という疑問が当然生じる.それについてはConclusions and Discussionで考察されている.1/4SST勾配がどういう状況かというと…
1.中緯度からの傾圧性の影響を取り除いた.
2.赤道以外の熱帯域が通常より高温となっている.
とか.1.からは中緯度との相互作用がMJOを作っている可能性を除外して,2.からは不安定性を増強する結果となったとしている.
MJOの再現というよりも,むしろMJOが不安定化させる原因を,かなり特別な条件を作ることで探した論文と考えれば納得できそう.そういうことにしてLM11にとりかかる.
だいたい言っていることは同じだが,新しく取り入れた実験は
1.降水偏差による長波加熱偏差を取り除いた実験(Fixed RADiation; FRAD)
である.目的は,雲放射と湿潤放射のMJOにおけるfeedbackの影響を理解すること.その他には,M10と同様な
2.1/4SST勾配,帯状非対称実験(QMZA)
3.1/4SST勾配,帯状対称実験(QMZS)
である.その結果,QMZAでなくて,振幅は約半分小さいが,FRADでもMJOを再現できた.
FRADでうまくMJOを再現できたことから,放射偏差の強まりや弱まりは位相速度に影響を与えないことがわかった.FRADとQMZAで遅い東進速度が再現されたのは,平均帯状風によって降水の西側で比湿収束が大きいことによる.したがって,帯状非対称での平均帯状風が重要である.(ついでに,本実験で背の低い雲(浅い対流)が再現できていないことの理由も書いてあった.)
つまり,MJOを不安定化させるには,雲放射とwind-evaporation feedbackの両方が必要である.
雲の放射と非線形的なWISHEをうまく取り入れて,SSTを工夫して入れたらMJOがプリミティブ方程式系でも再現されるようだ.うーん…,まだしっくりこない.
こりから色々考察をふくらませて,最終的に新しいMJOメカニズムに迫ることが出来れば,面白い実験だと言えるだろう.納得できないのは,まだこれらの論文を私が理解できていないからというのが大きいかもしれないので,もう少し正確な理解に務める必要は当然ある.いくつか勉強すべきものも見つかった気がする.
1.非線形なWISHE
2.中緯度が赤道に与える影響
3.観測からわかるMJOとSSTとの関係
NICAMのデータも見てみたいな.観測データの解析で研究をしてみたい.でも,その前に論文投稿してしまわなくちゃ.早く書くよう注意されたので,それに集中しよう.
(注意: 内容が正しいかどうかはわかりません.)
Landu, K. and E. D. Maloney, 2011: Effect of SST Distribution and Radiative Feedbacks on the Simulation of Intraseasonal Variability in an Aquaplanet GCM., J. Meteor. Soc. Japan, 89, 195-210.
と,それに関連した論文
Maloney, E. D., A. H. Sobel and W. M. Hannah, 2010: Intraseasonal Variability in an Aquaplanet General Circulation Model., J. Adv. Model. Earth Syst., 2, Art. #5, 24 pp.
をひと通り読んだ.気になったのは,Maloney et al. (2010, hereafter M10)で,CAM3.1を用いてMadden-Julian Oscillation (hereafter MJO)の再現に成功したという雰囲気の文面があったから.
そもそもCAM3.1はプリミティブ方程式系を用いている.NICAMでMJOの再現に成功したのは非静力学モデルにして計算したからだと思い込んでいた私にとっては信じがたい論文であった.だからかなり疑いながら読むことにした.
Landu and Maloney 2011(hereafter LM11)はM10を元に拡張させた論文だったので,まずはM10を読んだ.この論文で新しいポイントとしては,
1.赤道付近を除き,南北SST勾配を現実的な値の四分の一にした.
という一点だろう.「なんで1/4??」という疑問は消えない.まぁ,感度実験なんてそんなもんだと言い聞かせて読み進める.
行った実験は3タイプ.与えるSSTを変えて,それによる応答を調べている.
1.現実的SST
2.帯状対称SST
3.1/4SST勾配
ざっくり結果の印象を述べるなら,
1.MJOっぽいのはできたが,降水の分散は赤道を挟んで2つのピークを持つ.帯状風は高周波をかなり含んでいる.降水については帯状波数が1~2より大きいところにもピークを持つ.
2.MJO的でない.
3.赤道より南に強い降水の分散ピークを持つ.東西風偏差も強いため,線形的なWISHEではないが,非線形なWISHEが東進を遅くするのに効いているかも.観測で見られる周波数にかなり近い.
といった感じか.要するに,
「1/4SST勾配の実験が最もよくMJOを再現できた.ただし,その強度が大きすぎるし,湿度偏差の傾いた鉛直構造は再現されていない.」
ここで,1/4SST勾配と言われても騙されているとしか思えない…という疑問が当然生じる.それについてはConclusions and Discussionで考察されている.1/4SST勾配がどういう状況かというと…
1.中緯度からの傾圧性の影響を取り除いた.
2.赤道以外の熱帯域が通常より高温となっている.
とか.1.からは中緯度との相互作用がMJOを作っている可能性を除外して,2.からは不安定性を増強する結果となったとしている.
MJOの再現というよりも,むしろMJOが不安定化させる原因を,かなり特別な条件を作ることで探した論文と考えれば納得できそう.そういうことにしてLM11にとりかかる.
だいたい言っていることは同じだが,新しく取り入れた実験は
1.降水偏差による長波加熱偏差を取り除いた実験(Fixed RADiation; FRAD)
である.目的は,雲放射と湿潤放射のMJOにおけるfeedbackの影響を理解すること.その他には,M10と同様な
2.1/4SST勾配,帯状非対称実験(QMZA)
3.1/4SST勾配,帯状対称実験(QMZS)
である.その結果,QMZAでなくて,振幅は約半分小さいが,FRADでもMJOを再現できた.
FRADでうまくMJOを再現できたことから,放射偏差の強まりや弱まりは位相速度に影響を与えないことがわかった.FRADとQMZAで遅い東進速度が再現されたのは,平均帯状風によって降水の西側で比湿収束が大きいことによる.したがって,帯状非対称での平均帯状風が重要である.(ついでに,本実験で背の低い雲(浅い対流)が再現できていないことの理由も書いてあった.)
つまり,MJOを不安定化させるには,雲放射とwind-evaporation feedbackの両方が必要である.
雲の放射と非線形的なWISHEをうまく取り入れて,SSTを工夫して入れたらMJOがプリミティブ方程式系でも再現されるようだ.うーん…,まだしっくりこない.
こりから色々考察をふくらませて,最終的に新しいMJOメカニズムに迫ることが出来れば,面白い実験だと言えるだろう.納得できないのは,まだこれらの論文を私が理解できていないからというのが大きいかもしれないので,もう少し正確な理解に務める必要は当然ある.いくつか勉強すべきものも見つかった気がする.
1.非線形なWISHE
2.中緯度が赤道に与える影響
3.観測からわかるMJOとSSTとの関係
NICAMのデータも見てみたいな.観測データの解析で研究をしてみたい.でも,その前に論文投稿してしまわなくちゃ.早く書くよう注意されたので,それに集中しよう.
(注意: 内容が正しいかどうかはわかりません.)
2011年7月3日日曜日
失ってはいけないもの
新しい何かを得るためには,今まで持っていた何かを失うものなのだろうか.そうだとしたら,失うものと得るものの量は等しいのだろうか.
そんなことを考えていたら,なんだか苦しくなった.
ここ最近の話ではあるが,得るものがない割には失いつつあるものが多くある気がして,怖くなることがしばしばある.具体的な物ではないが,精神的に何かを失い続けている気がする.本当に何かわからないけど,そんな気がすごくする.
例えば,日々の楽しみ.趣味といえば,音楽や食事,旅行といったところだろう.昔は釣りやゲーム,サッカーなどのスポーツをしてたけど,今ではほとんどしていない.
ゲームはどうでもいいが,釣りとスポーツは時々無性にしたくなる.結局,いつもしないのだが.最近は旅行にも行っていないな.どこかに行くのは学会のついでの観光だけかな.まぁ,それはそれで楽しいけど,思いっきり旅行して新しい景色を堪能するような感覚は全くない.学会の場合は東京が多いから仕方ない.
時間の使い方を変えたいと思いアルバイトを辞めてから,外食を控えるようになった.飲み会は別だが,定食にお金を払うのがもったいないと思うようになり,自炊するのが定番になった.これはこれで良いことだと思うが,夕食時に研究室の人や友だちと話す機会が以前より減ったのは寂しいものだ.
音楽も,サークルを休止してから接する機会がめっきり減った.今日は久々に大音量で音楽を聴きまくった.心地良く感じた.しばらくの間,音楽に浸るという楽しみすら忘れかけていたのかもしれない.
他に打ち込むことができたから,それらを忘れている.そうなのかもしれないが,本当に忘れてしまうのはもったいない.
今打ち込んでいることは,間違いなく大学院での研究活動だ.これのために大学に入ったんだから,本気にならないわけがない.ただ,なんとなく最近はメリハリが悪くなってきて,効率が落ちている.単に研究が難しくて進まないだけかもしれない.
でも,壁がでかいというよりは,壁を乗り越えようとするパワーが小さくなっているように思えてならない.ガムシャラに立ち向かう気力が生み出せない.
どうしたものか.ガムシャラにパワーで乗り越えてくるほうが得意だと思っていたのに,何だこのザマは.こんなことで悩むとは思ってもいなかった.何が変わったのか.
楽しむことを忘れているのかも.
もっと楽しむことを見つけて,存分に楽しさを味わなきゃいけない.それがメリハリであり,それがパワーになる.そしたら苦しくてもガムシャラになれるのではないだろうか.
いま失いかけていたのは,たくさん持っているはずの「楽しむこと」だったのかも.夢を叶える作業と引換に忘れてしまうにはもったいないものだ.
そうだな….たまにはどこか遠くに行って,たまには音に埋れて,たまにはボールでも蹴るとしようか.それが今,必要なんだと思うから.
そんなことを考えていたら,なんだか苦しくなった.
ここ最近の話ではあるが,得るものがない割には失いつつあるものが多くある気がして,怖くなることがしばしばある.具体的な物ではないが,精神的に何かを失い続けている気がする.本当に何かわからないけど,そんな気がすごくする.
例えば,日々の楽しみ.趣味といえば,音楽や食事,旅行といったところだろう.昔は釣りやゲーム,サッカーなどのスポーツをしてたけど,今ではほとんどしていない.
ゲームはどうでもいいが,釣りとスポーツは時々無性にしたくなる.結局,いつもしないのだが.最近は旅行にも行っていないな.どこかに行くのは学会のついでの観光だけかな.まぁ,それはそれで楽しいけど,思いっきり旅行して新しい景色を堪能するような感覚は全くない.学会の場合は東京が多いから仕方ない.
時間の使い方を変えたいと思いアルバイトを辞めてから,外食を控えるようになった.飲み会は別だが,定食にお金を払うのがもったいないと思うようになり,自炊するのが定番になった.これはこれで良いことだと思うが,夕食時に研究室の人や友だちと話す機会が以前より減ったのは寂しいものだ.
音楽も,サークルを休止してから接する機会がめっきり減った.今日は久々に大音量で音楽を聴きまくった.心地良く感じた.しばらくの間,音楽に浸るという楽しみすら忘れかけていたのかもしれない.
他に打ち込むことができたから,それらを忘れている.そうなのかもしれないが,本当に忘れてしまうのはもったいない.
今打ち込んでいることは,間違いなく大学院での研究活動だ.これのために大学に入ったんだから,本気にならないわけがない.ただ,なんとなく最近はメリハリが悪くなってきて,効率が落ちている.単に研究が難しくて進まないだけかもしれない.
でも,壁がでかいというよりは,壁を乗り越えようとするパワーが小さくなっているように思えてならない.ガムシャラに立ち向かう気力が生み出せない.
どうしたものか.ガムシャラにパワーで乗り越えてくるほうが得意だと思っていたのに,何だこのザマは.こんなことで悩むとは思ってもいなかった.何が変わったのか.
楽しむことを忘れているのかも.
もっと楽しむことを見つけて,存分に楽しさを味わなきゃいけない.それがメリハリであり,それがパワーになる.そしたら苦しくてもガムシャラになれるのではないだろうか.
いま失いかけていたのは,たくさん持っているはずの「楽しむこと」だったのかも.夢を叶える作業と引換に忘れてしまうにはもったいないものだ.
そうだな….たまにはどこか遠くに行って,たまには音に埋れて,たまにはボールでも蹴るとしようか.それが今,必要なんだと思うから.
2011年5月23日月曜日
感じた嬉しさと見えてきた課題
2011年5月21日,気象学会春季大会にてポスター発表を行なった。感じたことをまとめてみる。
1.発表に興味をもっていただけた嬉しさ
まず,気象庁数値予報課の方をはじめとして多くの人が自分の研究テーマに興味をもってくれたことに驚きと嬉しさを覚えた。学会が始まるまでは自分の研究はマニアックで,力学が多少複雑なためにあまり多くの方が興味を示すとは思っていなかった。むしろ,ポスター発表してもあまり人が集まらないのではないかと不安ばかり募っていた。怖くて眠れず,夜中に五反田を徘徊するくらいだったし,僕としては最上級の緊張だと思う。
当日の朝ポスターを貼っても緊張は止まらず,いつものごとく手が痺れた。緊張するといつも手がしびれる。ポスター会場を後にし,口頭発表を聞きに会場へ向かった。やはり発表が頭に入ってこないので,一時間早いが10時半にはポスター会場に移動して一人頭の中で練習をした。それすら頭に入っていない気がしたが,ひたすら資料に目を通し続けた。先輩と会場前で会ったときに,「覇気がない顔だね」と指摘されて少し正常を取り戻した気はする。
少し疲れたので11時に自分のポスターの前に行ってみた。すると,もう人が3人ほど立っている。心の準備はできていなかったが,「説明いたしましょうか」と声をかけた。「はい」と言われた。この瞬間が気象学会デビューだった。とにかく練習した通りに話し始め,相手が理解できているかを確かめながら結果,考察へと進んだ。完全とは言えないかもしれないが,相手の方が自分の研究について理解してくれて,最後に面白い研究だとコメントしてくれた。終えたときには11時半を回っており,気が付けば会場は人で溢れていた。僕の周りにも人が増えていた。最初の方々が去ったあと,「説明してもらえませんか」と言われた。僕は「はい」と言った。これを4回くらい繰り返したのだろうか。3回目を終えた頃にはA4サイズのミニポスターは全てなくなってしまった。次回は30枚準備しよう。
人が途絶えることなくあっという間に13時を回った。本来なら12時半までのポスター発表で時間をオーバーするまで話し続けることができたことを嬉しく思う。最後に卒業した先輩とその友達が説明を求めてくれた。昼ご飯は諦めた。
後で聞いた話だが,ポスターを聞きに来てくれた方々の中には気象庁のメソモデルを作った方や,気象庁で働いている先輩の上司の方,僕が注目しているテーマに関連する研究をこれまでしてきた方などがいらしたらしい。嬉しい限りだが,その時に知っていればなお良かった。次回からは名刺をつくるかどうかして,お互いに名前を確認するような流れを作ろうと思う。
発表を聞いてくれたたくさんの方々のためにも今後も精一杯努力して,論文投稿や研究発表をしていきたい。
2.自分の理解度の未熟さ
人がたくさん来てくれたら,その分たくさんの質問やアドバイスが流れ込んでくる。自身の研究に対する質問はある程度答えることができたが,最も多かった質問「方程式を解いているときの設定」にはうまく対応できなかった。時間発展問題ではなく,今のところは変数全てに波型を与えて解いている。これでは初めて聞く人にとっては理解できないのだろう。確かにこの手の問題は通例時間発展問題として解くことが多い。だから聞き手は時間発展問題であると思い込んで話を聞いているのかもしれない。あまり波型の話は説明していないのだから,このような人たちは思い込んだまま結果へ移るだろう。そうすると一気に「関係の無い疑問」が生まれ出して,最後には説明についてこなくなる。なので,今後発表するときは問題設定をいかに強調しながら簡潔に説明できるかにも力を入れようと思う。
いただいたアドバイスもたくさんあるが,理解できずにあまり覚えれなかったものがいくらかある。特に,「不安定」という言葉が出てくると全くまともな答えができていない。時間発展問題ではないから不安定にはならないと思うとか,波型が実数だから成長率とは関係ないとか,ある意味適当に流していた。不安定について勉強を始めなければ。
ひとつ気になる質問があった。それは「non-traditionalコリオリ項が圧力の位相をずらす効果を持っているといったが,それは実際的にはどういう状況なのか」といった内容だった。彼女はしきりにメモを取りながら聞いていたので,彼女にとってすごく重要な質問だったのだろう。順圧的構造が傾圧的構造になるのだから,物理的に意味があるはずなのだが,はっきりと答えれなかった。明日からはこの点を深く勉強しなくてはならない。今後の課題が見つかったのは良い収穫だ。
3.モチベーション増大
発表を通じて早く論文に出す必要性を感じた。論文にすることで興味を持つ人たちが読んでくれる。より深く理解してもらえたら,より発展的な議論をすることができる。早速今週中には構成を決定して,日本語で書きはじめよう。余談だが,飲み会でタイトルを「true or false?」のように「or」を使って書いたら面白いというアイディアをいただいた。大変面白いが,今回は避けることにしようと思う。
発表以外でもモチベーションが上がったきっかけはある。ほかの人の発表を聞いていて,以前と着眼点が変わったのに気づいた。自分の研究と関わりがあるものを自然と求めて(しまって)いる。今回の学会中にいくつか自分の研究が活かせそうな研究があった気がする。そういったところにも注意しながら研究の意義を増やしていきたい。自分の研究の結果を元にほかの研究者と議論できるようになりたい。
他にも感じたことはたくさんあるが,やはり研究を知ってもらえたことが一番嬉しかったことだ。今後も新しいことを見つけて,どんどん積極的に公表・議論していこう。
1.発表に興味をもっていただけた嬉しさ
まず,気象庁数値予報課の方をはじめとして多くの人が自分の研究テーマに興味をもってくれたことに驚きと嬉しさを覚えた。学会が始まるまでは自分の研究はマニアックで,力学が多少複雑なためにあまり多くの方が興味を示すとは思っていなかった。むしろ,ポスター発表してもあまり人が集まらないのではないかと不安ばかり募っていた。怖くて眠れず,夜中に五反田を徘徊するくらいだったし,僕としては最上級の緊張だと思う。
当日の朝ポスターを貼っても緊張は止まらず,いつものごとく手が痺れた。緊張するといつも手がしびれる。ポスター会場を後にし,口頭発表を聞きに会場へ向かった。やはり発表が頭に入ってこないので,一時間早いが10時半にはポスター会場に移動して一人頭の中で練習をした。それすら頭に入っていない気がしたが,ひたすら資料に目を通し続けた。先輩と会場前で会ったときに,「覇気がない顔だね」と指摘されて少し正常を取り戻した気はする。
少し疲れたので11時に自分のポスターの前に行ってみた。すると,もう人が3人ほど立っている。心の準備はできていなかったが,「説明いたしましょうか」と声をかけた。「はい」と言われた。この瞬間が気象学会デビューだった。とにかく練習した通りに話し始め,相手が理解できているかを確かめながら結果,考察へと進んだ。完全とは言えないかもしれないが,相手の方が自分の研究について理解してくれて,最後に面白い研究だとコメントしてくれた。終えたときには11時半を回っており,気が付けば会場は人で溢れていた。僕の周りにも人が増えていた。最初の方々が去ったあと,「説明してもらえませんか」と言われた。僕は「はい」と言った。これを4回くらい繰り返したのだろうか。3回目を終えた頃にはA4サイズのミニポスターは全てなくなってしまった。次回は30枚準備しよう。
人が途絶えることなくあっという間に13時を回った。本来なら12時半までのポスター発表で時間をオーバーするまで話し続けることができたことを嬉しく思う。最後に卒業した先輩とその友達が説明を求めてくれた。昼ご飯は諦めた。
後で聞いた話だが,ポスターを聞きに来てくれた方々の中には気象庁のメソモデルを作った方や,気象庁で働いている先輩の上司の方,僕が注目しているテーマに関連する研究をこれまでしてきた方などがいらしたらしい。嬉しい限りだが,その時に知っていればなお良かった。次回からは名刺をつくるかどうかして,お互いに名前を確認するような流れを作ろうと思う。
発表を聞いてくれたたくさんの方々のためにも今後も精一杯努力して,論文投稿や研究発表をしていきたい。
2.自分の理解度の未熟さ
人がたくさん来てくれたら,その分たくさんの質問やアドバイスが流れ込んでくる。自身の研究に対する質問はある程度答えることができたが,最も多かった質問「方程式を解いているときの設定」にはうまく対応できなかった。時間発展問題ではなく,今のところは変数全てに波型を与えて解いている。これでは初めて聞く人にとっては理解できないのだろう。確かにこの手の問題は通例時間発展問題として解くことが多い。だから聞き手は時間発展問題であると思い込んで話を聞いているのかもしれない。あまり波型の話は説明していないのだから,このような人たちは思い込んだまま結果へ移るだろう。そうすると一気に「関係の無い疑問」が生まれ出して,最後には説明についてこなくなる。なので,今後発表するときは問題設定をいかに強調しながら簡潔に説明できるかにも力を入れようと思う。
いただいたアドバイスもたくさんあるが,理解できずにあまり覚えれなかったものがいくらかある。特に,「不安定」という言葉が出てくると全くまともな答えができていない。時間発展問題ではないから不安定にはならないと思うとか,波型が実数だから成長率とは関係ないとか,ある意味適当に流していた。不安定について勉強を始めなければ。
ひとつ気になる質問があった。それは「non-traditionalコリオリ項が圧力の位相をずらす効果を持っているといったが,それは実際的にはどういう状況なのか」といった内容だった。彼女はしきりにメモを取りながら聞いていたので,彼女にとってすごく重要な質問だったのだろう。順圧的構造が傾圧的構造になるのだから,物理的に意味があるはずなのだが,はっきりと答えれなかった。明日からはこの点を深く勉強しなくてはならない。今後の課題が見つかったのは良い収穫だ。
3.モチベーション増大
発表を通じて早く論文に出す必要性を感じた。論文にすることで興味を持つ人たちが読んでくれる。より深く理解してもらえたら,より発展的な議論をすることができる。早速今週中には構成を決定して,日本語で書きはじめよう。余談だが,飲み会でタイトルを「true or false?」のように「or」を使って書いたら面白いというアイディアをいただいた。大変面白いが,今回は避けることにしようと思う。
発表以外でもモチベーションが上がったきっかけはある。ほかの人の発表を聞いていて,以前と着眼点が変わったのに気づいた。自分の研究と関わりがあるものを自然と求めて(しまって)いる。今回の学会中にいくつか自分の研究が活かせそうな研究があった気がする。そういったところにも注意しながら研究の意義を増やしていきたい。自分の研究の結果を元にほかの研究者と議論できるようになりたい。
他にも感じたことはたくさんあるが,やはり研究を知ってもらえたことが一番嬉しかったことだ。今後も新しいことを見つけて,どんどん積極的に公表・議論していこう。
2011年5月14日土曜日
人を楽しませるプレゼンをしなければ
自分の発表を聞きに来てくれる人がいるなら,全力でその人に伝えなくてはならない。ただ淡々と伝えるのではなく,相手を楽しませて引き込まなくてはならない。
そのためにはどうしたら良いのだろう?
気象学会春季大会を控えた最後の週末。今回の学会は私にとって初めての全国規模の発表である。ポスター発表で参加するのだが,やはり不安なのは発表を聞きに来てもらえるかというところだ。
以前,学会の聴講に行った際にポスター発表を聞いてくれと必死に足止めされたことがある。それぐらいのガッツは必要かもしれないが,出来ることなら人が集まるような雰囲気を作り出したい。
何が必要だろうか。
最も大切なのは,やはりポスターの第一印象だろう。わかりにくそうで楽しそうに見えないポスターでは人は集まらない。
では,どうしたら印象の良いポスターに仕上がるか?ぱっと見たときに何を調べて何がわかり,その結果がその分野にどんな影響を与えるかがわかれば,興味がある人は集まるのではないだろうか?じっくり見なければ何を書いているのかわからないポスターではせっかくのチャンスを捨ててしまいかねない。
なので,結論は目立つ場所に簡潔に書き,重要性をアピールできる文章となるよう努力しよう。
第一印象だけでは聞いていて飽きて帰ってしまう可能性がある。内容が伴わなければ意味がないのは当然だ。研究の結果を出すのが大事なのは分かっているが,「不運にも」インパクトのある結果ではないこともある。
その場合はどうしたらよいか?
出来ることはただひとつ。話し方を意識して重要性を引き立てるしかない。そのための道具として見やすい図や簡潔なまとめ方も必要となる。できる限界までポスターを美しくし,あとは話すときに相手の理解を確かめながら順序よく説明するのが良いだろう。相手が理解してくれて初めて相手は聞き手として楽しめる。したがって,決してポスターが完成して安心してはならず,説明の練習も必須である。これが無くてはせっかくのポスターも台無しである。
「いかに自分が出した結果に意味があるのか」を伝えるための努力を惜しんではいけない。
あとは本番,清潔感のある身なりでポスターの前に立っておくことだ。それと,自分が楽しそうに発表することも重要なポイントだろう。感情のない発表は退屈だ。
ポスターと自身の第一印象を引き上げて,しっかりとした説明で自分の研究の重要性をアピールし,相手に楽しんでもらおう。
そのためにはどうしたら良いのだろう?
気象学会春季大会を控えた最後の週末。今回の学会は私にとって初めての全国規模の発表である。ポスター発表で参加するのだが,やはり不安なのは発表を聞きに来てもらえるかというところだ。
以前,学会の聴講に行った際にポスター発表を聞いてくれと必死に足止めされたことがある。それぐらいのガッツは必要かもしれないが,出来ることなら人が集まるような雰囲気を作り出したい。
何が必要だろうか。
最も大切なのは,やはりポスターの第一印象だろう。わかりにくそうで楽しそうに見えないポスターでは人は集まらない。
では,どうしたら印象の良いポスターに仕上がるか?ぱっと見たときに何を調べて何がわかり,その結果がその分野にどんな影響を与えるかがわかれば,興味がある人は集まるのではないだろうか?じっくり見なければ何を書いているのかわからないポスターではせっかくのチャンスを捨ててしまいかねない。
なので,結論は目立つ場所に簡潔に書き,重要性をアピールできる文章となるよう努力しよう。
第一印象だけでは聞いていて飽きて帰ってしまう可能性がある。内容が伴わなければ意味がないのは当然だ。研究の結果を出すのが大事なのは分かっているが,「不運にも」インパクトのある結果ではないこともある。
その場合はどうしたらよいか?
出来ることはただひとつ。話し方を意識して重要性を引き立てるしかない。そのための道具として見やすい図や簡潔なまとめ方も必要となる。できる限界までポスターを美しくし,あとは話すときに相手の理解を確かめながら順序よく説明するのが良いだろう。相手が理解してくれて初めて相手は聞き手として楽しめる。したがって,決してポスターが完成して安心してはならず,説明の練習も必須である。これが無くてはせっかくのポスターも台無しである。
「いかに自分が出した結果に意味があるのか」を伝えるための努力を惜しんではいけない。
あとは本番,清潔感のある身なりでポスターの前に立っておくことだ。それと,自分が楽しそうに発表することも重要なポイントだろう。感情のない発表は退屈だ。
ポスターと自身の第一印象を引き上げて,しっかりとした説明で自分の研究の重要性をアピールし,相手に楽しんでもらおう。
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